パリ五輪のサーフィン男子に出場している稲葉玲王(れお)選手(27)=千葉県一宮町出身=が日本時間の30日未明、3回戦を突破して準々決勝に進んだ。会場の仏領ポリネシアのタヒチは波が大きく、持ち味の力強いパフォーマンスを発揮している。手塚治虫の名作「ジャングル大帝」から名前を付けた両親は「絶好の波に乗れれば、メダルが手に入るかもしれない」と期待する。

 稲葉選手は試合後、所属先を通じて「次が最終日なので、最後まで気合を入れて金メダルを取りに行きます」とコメントした。

 父の康宗さん(58)と母の弘江さん(57)は一宮町でサーフショップを営む。稲葉選手は一宮町に滞在中、ウェートなど陸上トレーニングを中心にこなした。いつものように、地元の玉前神宮で必勝祈願をし、恩師らの墓参りをした。

 7月中旬、自身初の五輪でも遠征と変わらずに「行ってきます」と出発した。「本人はリラックスした様子。親のほうが緊張していて、食事のときもオリンピックの話題に触れないようにしていた」と弘江さんは話す。

 康宗さんはプロサーファー。稲葉選手が1歳のときにハワイの海に連れていった。水を怖がり、プロサーファーにする夢を諦めたが、5歳のころから次第にサーフィンを楽しむようになった。

 2010年に当時最年少の13歳でプロになり、その後は各国を転戦して経験を積んだ。康宗さんと弘江さんは「玲王は家を空けることが多く、成長の過程を見られなかった。ホテルに着いて電話がかかってくるまで心配だった」と振り返る。

 サーフィンが初めて五輪の正式種目になった21年の東京五輪は一宮町が会場になった。「出場できず、悔しかった」と話す稲葉選手は、パリでの活躍を誓った。水しぶきを作るライディング「スプレー」が真骨頂だ。

 タヒチは海底が浅く、大きな波が生まれやすい。失敗すると、サンゴ礁に体をたたきつけられる可能性がある。「まずは、けがをしないでほしい。そしてメダルを狙えれば」と両親は言う。

 見せ場は崩れそうな大波のトンネル「チューブ」をくぐり抜ける場面だ。「レオのような優しさと強さを兼ね備えてほしい」と願って名付けた稲葉選手が思い描く「一生忘れられない波」に巡り合うチャンスを祈っている。(中野渉)

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