(29日、第106回全国高校野球選手権徳島大会 阿南光5―6鳴門渦潮)
接戦を制し、甲子園への切符をつかんだ主将の目には、涙が浮かんでいた。
1点を追う七回裏1死三塁のチャンス。鳴門渦潮の端村七聖(ななせ)主将(3年)に打席が回ってきた。
3球続けてボールの後にストライク。ベンチを見ると、森恭仁監督からスクイズの指示が出た。
「自分はそんなに打てるバッターではない。チームに貢献したい」と練習を重ねてきたバント。一発で決めた。
同点に追いつき、一塁上で何度も拳を突き上げた。
「主将になってから、うれしいことは一つもなかった」。そう端村選手は吐露する。
鳴門渦潮は昨秋以降、公式戦で勝利がなかった。前年は秋季県大会で準優勝し、四国大会を経験したが、自分たちの代では初戦敗退。前年より1カ月ほど長い冬練習になった。「何を目標にすれば良いか分からなかった」と端村主将は振り返る。
春季県大会でも1回戦負け。「チームの雰囲気が悪く、なかなか成果が出なかった」
だからこそ、最後の夏は結果を残したかった。
「みんなで心一つに」「1試合ずつ勝とう」と呼びかけ合い、ノーシードで臨んだ今大会。エース岡田力樹(りゅうき)投手(3年)が好投を続け、試合を重ねるたび長打も飛び出し、大波に乗った。
延長十回にはタイブレークの走者として本塁を踏んだ端村主将。戻ったベンチでサヨナラ適時打を見て鳥肌が立った。涙があふれ出していた。
「公式戦で勝つってやっぱり高校野球の醍醐(だいご)味だと思うんです。キャプテンっていうのもあって、最後の大会で勝ててバーッてきた」
閉会式を終え、チームとして7年ぶりの甲子園を見据えた端村主将。その目にもう涙はなかった。(内海日和)
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