第106回全国高校野球選手権福島大会は、聖光学院が3年ぶり19回目の優勝を決め、幕を閉じた。68校62チームが臨み、様々なドラマが生まれた熱戦を振り返る。

 目を見張ったのは、体育科がない公立校の躍進だった。23年ぶり4強の磐城、準々決勝で聖光学院を苦しめたいわき湯本、秋と春の県大会準優勝の光南を倒した須賀川創英館などだ。

 なかでも、ベンチが20人に満たないチームの奮闘が印象的だった。

 32年ぶり4強の相馬は、中学時代に県優勝や地区選抜を経験したメンバーが結集。「地元から甲子園」の夢を追った。今秋からは1、2年生が連合チームを組む予定だが、エース宝佑真投手(3年)は「変わらず甲子園を目指してほしい」とバトンを託した。

 豪雪地帯の小規模校・只見は、男子生徒の約3人に1人が野球部員だった。選手16人で強豪私立との激戦を制し、久しぶりの16強。幼なじみの3年生5人は晴れやかな表情で球場を去った。

 安達・本宮は週末しか合同練習できない環境のなか、連合チームとして初の16強入りを果たした。昨夏の結成当初はぎこちなかったが、練習中のコミュニケーションを密に取り一体になった。今後、増える連合チームに勇気を与えるだろう。

 準優勝にとどまり、昨夏の雪辱を果たせなかった学法石川。個人的に印象に残ったのは、背番号20の飯島優音(まさと)選手(3年)だ。新チームでは正捕手候補だったが、昨秋に交錯プレーで内臓損傷の重傷を負った。2年生にレギュラーの座は渡したが、打撃練習に励んで今夏は代打で3打数2安打。努力は裏切らないことを教えてくれた。

 今大会の特徴としては、昨年20本だった本塁打が9本と半減。新たに導入された低反発バットの影響がうかがえる。

 プレー外でも胸が熱くなった。死球を受けた相手選手の元に全力ダッシュで向かってコールドスプレーを振りかける。控え選手によるスタンドでの応援合戦も試合後は互いの健闘をたたえてエールを送り合う――。こうした敵味方を越えて相手を思いやるシーンも多かった。(酒本友紀子)

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