(29日、第106回全国高校野球選手権和歌山大会決勝 智弁和歌山4―2近大新宮)

 六回表、智弁和歌山の攻撃。先制打を放った松嶋祥斗選手(3年)を一塁において、上田潤一郎捕手(3年)が打席に立った。この日は無安打。狙い澄ましてバットを振り、右前安打に。塁上でガッツポーズをして感情を爆発させると、ベンチが一斉に沸き立った。

 チームは昨夏に初戦で敗退。秋季大会でも負け、近畿大会に進めなかった。何が足りないか、ずっとみんなで考えてきた1年だった。

 集大成のこの大会は準決勝まで、無失点で勝ち上がった。「打たなくても、投手陣をリードしてくれればそれでラッキー」。それほど中谷仁監督が信頼する守りの要。5人の多彩な投手の個性を知り尽くし、話し合いながらリードしてきた。全5試合を通してマスクをかぶり、勝ち上がってきた。

 優勝が決まった瞬間、20人がマウンドに集まり、腕を高く掲げた。「今年はマウンドで喜ぼうって、うちの代は決めていた」。これまでの思いが詰まった「一番」だった。

 頂点に立った。ただ目指すのはもちろん、もっと先だ。(寺沢尚晃)

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