第106回全国高校野球選手権福井大会(県高校野球連盟、朝日新聞社主催)は、北陸が2年連続5回目の優勝を果たして幕を閉じた。好投手がそろい、接戦が目立った大会を振り返る。

 今大会に出場した好投手は枚挙にいとまがない。決勝でも帽子を飛ばしながら凡打の山を築いた敦賀気比の竹下海斗投手。福井工大福井の酒井大地投手と篠原響投手の左右の二枚看板は、北陸との準々決勝でも継投で粘り強さをみせた。準々決勝で五回コールドの参考記録ながら「完全試合」を達成した福井商の前川清太投手らも忘れがたい。

 シード校だけでなく若狭の研谷湊都投手、敦賀の長谷川冬聖投手、敦賀工の正光健投手、武生商工の山本康平投手ら、3年生投手の奮戦が強く印象に残った。美方の2年生、藤田泰馳投手も球の切れが鋭く、来年はさらに成長した姿を見せてくれそうだ。

 そして最強は、北陸の投手陣だった。ノーシードで臨み、福井工大福井と準々決勝、福井商と準決勝、敦賀気比と決勝で対戦。投手戦を勝ち抜くごとにたくましさが増した。

 全5試合で本格派右腕の井黒晃佑投手が先発。左腕で上手や下手で投げ分ける鳴海凱斗投手、右下手の竹田煌士投手とタイプの異なる中継ぎ陣がおり、エース右腕の竹田海士投手が抑えた。最速149キロのエースが後ろに控えているため、井黒投手らは思い切って投げ、相手は早く点を取ろうと焦って北陸のペースに引き込まれるようだった。この布陣は甲子園でも勝ち上がる力があり、今から楽しみだ。

 今大会27試合で3点差以内の接戦は11試合。投手戦が多かった上に、新基準の低反発バットの影響も垣間見えた。本塁打は春の県大会の0本から今大会は4本に増えたが、外野手の頭上を越えない飛球が多かった。それでも武生商工などは両翼線を狙った長打が目立ち、上位チームの中軸がとらえた打球は伸びて、工夫と習熟もみえた。

 「投高打低」の攻撃力を補う機動力や、内野ゴロで次の塁を狙う巧みな走塁、犠打や犠飛の確実性を高める一方、投手や捕手と内野が連係した牽制(けんせい)の技も、上位チームはしっかり磨いていた。観戦した誰もがその裏にある努力に敬服し、野球の面白さを感じただろう。(鎌内勇樹)

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