(28日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会決勝 花咲徳栄11―9昌平)

 延長タイブレークの十回表、花咲徳栄は相手の失策などで1点を勝ち越してなおも1死満塁。打席に入った九番打者、阿部航大(3年)は「1点じゃ足りない」と考えていた。裏の昌平の攻撃は、強打の上位打線から始まるからだ。

 緊張から初球の変化球を中途半端に振ってフライになったが、運良くファウルになった。

 直前に主将の生田目奏(3年)から「十分練習した。あとはやるだけだ」と言われたことを思い出し、「なんとか上位打線に回そう。きれいなヒットじゃなくていい。とにかく芯で打つ」と自分に言い聞かせた。

 2球目、外角高めの直球を思いきりフルスイング。「打った瞬間、抜けるってわかりました」。打球は左中間へ落ち、走者一掃の二塁打で一気に3点をもぎとった。塁上で両方の拳を突き上げた。

 強肩俊足が評価されていたが、緊張してチャンスで打てないことに苦手意識があった。岩井隆監督のアドバイスで、真芯で捉えることを意識して打撃練習をした。鏡の前でフォームを確認しながらの素振りも欠かさなかった。背番号2桁で迎えた春の県大会は、決勝で1死満塁からヒットを放つなど活躍。夏前に背番号5をもらった。

 岩井監督は「臆病なところがあったが、それを乗り越えた」と評価する。「少しでもチームに貢献できたことがうれしい。自分の努力と仲間を信じて、甲子園でも活躍したい」(山田みう)

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