(28日、第106回全国高校野球選手権栃木大会決勝 石橋9―8国学院栃木) 

 「自分の役目はチャンスで上位につなぐこと。その役目を果たせたと思う」。石橋の伊沢颯盛(りゅうせい)(3年)は泥だらけになったユニホームで笑顔を見せた。

 この日は3安打。特に満塁で放った二回の右越え三塁打は、走者一掃の殊勲打。初回に5点を先取されて暗くなりかけたベンチの雰囲気を一転させた。無死一塁で回ってきた六回も単打でつなぎ、3点差を逆転するきっかけになった。

 石橋には強い思いを持って入学した。中学時代は作新学院の軟式野球部で1年から三塁のレギュラーを務めた。作新はあこがれの学校で、野球を始めるきっかけでもあった。10年前の夏の栃木大会の決勝で、優勝を決めた同校の選手の姿を見て少年野球のチームに入った。

 そのまま高校に進学し、作新で甲子園を目指す選択肢もあったがあえて石橋を選んだ。理由は将来の夢。実家は薬局で、薬剤師になる目標もあった。「勉強と両立するには」と考え抜いた末に、「文武不岐」をうたう石橋で勉強と野球の両立をすると決めた。その時から作新は「あこがれから打倒する存在になった」。

 石橋入学後、道のりは険しかった。「21世紀枠」で出場した昨春の甲子園はスタンドでの応援。昨秋もレギュラーから外れた。持ち味の守備力と粘り強い打撃に磨きをかけることで、今大会の正二塁手を勝ち取った。

 「甲子園をかけて戦おう」と誓って別れた作新とは、準決勝で対戦。2単打を放ち、勝利につなげた。決勝戦も「ここで負けたら作新の仲間たちの努力も無駄になる」という強い思いで臨んだ。

 「公立でも強豪私立を倒せることを示すことができた。きょうで完全にあこがれを超えられたと思います」(重政紀元)

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