(28日、第106回全国高校野球選手権大阪大会決勝 大阪桐蔭3―1東海大大阪仰星)

 八回裏、適時二塁打で1点を返された。相手のスタンドは大盛り上がり。球場の雰囲気ががらっと変わる。

 レフトを守る大阪桐蔭の徳丸快晴副主将(3年)は大歓声に負けないよう、「声切らすな!」「落ち着いていくぞ!」と声を張り上げ続けていた。

 新チームで副主将となり、結果を出さねばと、自分のことを一番に考えていた。

 転機は春。宮本真司郎主将(3年)がベンチを外れ、ゲームキャプテンを任された。

 近畿地区大会大阪府予選準々決勝の大阪学院大戦。1―0で迎えた九回、「大阪桐蔭を倒す」という相手の気持ちと会場の雰囲気に押され、2点を取られ逆転負けした。

 今春の選抜も同じだった。ベスト8に入ったが、相手に押されると、会場の雰囲気も相まって受け身になっていた。

 宮本主将は広い視野を持ってよく声をかけていた、と感じた。

 「もっと周りを見よう。そして逆境こそ受けずに押して、逆に相手を引かせよう」と誓った。

 それから全てにおいて、積極性をテーマに掲げた。

 毎晩開かれる寮でのミーティングで発言するとともに、周りから意見を聞き出すことを心がけた。

 打席でも積極性を見せようと、ボールを見逃すときも打ちにいく目線とそぶりを見せた。一方で、空振りはなるべくしない。そして長打よりも低く鋭い打球を狙うようにした。

 この夏、決勝も含めた7試合の打率は5割8分3厘。そして、成績で引っ張るだけではなく、仲間を鼓舞しようと声を出し続けた。試合を重ねるたびに、チームが束になっていくのを感じた。

 決勝の試合が終わると、ベンチから出てきた宮本主将と笑顔でハイタッチをした。交わした言葉は「俺らが練習で積み上げてきたこと、間違ってなかったな」だった。(西晃奈)

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