パリ五輪の開会式でセーヌ川をパレードするモンゴル選手団=パリで2024年7月26日、ロイター

 パリ・オリンピックは26日、開会式が行われ、各国・地域の選手団がセーヌ川を船に乗って行進した。開会式前に「世界の話題」を集めたのが、モンゴル選手団の衣装だった。その色彩や文様に込められた思いを大相撲界のモンゴル出身の親方に聞いてみると……。

 <絶賛が止まらない、モンゴルのパリ五輪ユニホーム 「開幕前に勝利」の声も>

 米CNNは開幕前、こう題した記事を配信した。SNS(ネット交流サービス)上でモンゴルが開会式と閉会式で身に着ける衣装が称賛されていることを紹介し、<インターネットがパリ2024オリンピックのユニホーム世界一に選んだのは、モンゴルだった>としている。

 衣装はモンゴルの民族衣装をモチーフにし、白を基調としている。国旗にある赤、青、黄が要所に配され、ベストには精密な刺しゅうが施されている。在日モンゴル大使館によると、この形態の民族衣装は結婚式や祝い事で着用するもので、モンゴルで白は清く、縁起の良いものとされる。

 ベストの刺しゅうも見事だ。モンゴル出身の元横綱・鶴竜の音羽山親方は「これはたぶんモンゴル相撲の時にも出すものですね。(旗が)9個あるかな?」と語る。確かに胸元の刺しゅうには白い旗が9本並び、中央に聖火がともる。9本の白い旗はモンゴル相撲を含めた民族スポーツの祭典・ナーダムの会場にも掲げられるもので「ジンギス・カン(チンギス・ハン)の時代からあるというもので、戦争の時は旗は黒、お祝い事やお祭りの時は白です」。

 さらに、在日モンゴル大使館によると、白い旗には平和の意味もある。また、ベストは広大なモンゴルの大地と空をイメージし、刺しゅうで雲やタカ、山があしらわれている。正に「平和の祭典」とされる五輪に母国の自然や文化をにじませる正装だ。

 デザインを手がけたのは、デザインなどを行っている企業「ミシェル&アマゾンカ」で、21年の東京五輪のモンゴル代表の衣装もデザインした。別のモンゴル出身の親方は「伝統、文化と現代のオリンピックの合わせ技。織りの細かさ、これがまたすごいなと思うんです。(デザインや刺しゅうは)時間と技術、織物屋の職人技というか神業というか」と感嘆する。

 五輪と大相撲を巡っては1998年長野冬季大会で、各国・地域の選手団を力士が先導し、当時の横綱・曙が土俵入りを披露した。その曙さんも4月、鬼籍に入った。開会式はさまざまな国・地域の文化に彩られる場でもある。【荻野公一】

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