(26日、第106回全国高校野球選手権西東京大会準決勝 早稲田実14―3日大二=5回コールド)

 6月半ば。メンバー発表より先に、応援団長に指名された。応援団長は野球部の3年生から選んでいたのに、異例の抜擢(ばってき)。ベンチ入りも狙っていただけに、「え、早くない?」。日大二の松沢百之介(2年)は、苦笑いするしかなかった。

 声が大きいわけでも、目立ちたがり屋なわけでもない。どうして選ばれたのかはわからない。でも、やるからには全力で。練習の空き時間を利用して、応援の振りの動きを特訓した。今大会で6試合目。応援の姿も、さまになってきた。

 甲子園に出ていた頃は、応援部もあったらしい。応援部OBから当時の腕章をもらった。色あせていて、ところどころにしみがあって。伝統の重みを感じた。ユーチューブで動画を見ると、同じ腕章をつけて応援していた。験担ぎで、今大会は洗わずにずっと使っている。

 準決勝の朝。同じ投手で尊敬するエースの鈴木勝也(3年)から、「期待しているから頑張れ」と言ってもらった。「任せて下さい」と答えた。早稲田実は応援もすごいけど、のまれちゃいけない。逆にのみこんでやろうって大声を出した。

 フェンス越しに、グラウンドにいる選手たちにパワーを届けた今年の夏。来年こそは、グラウンドに立ちたい。かっこいいからと、自分で選んだ長くて赤いはちまき。受け継いだ腕章と一緒に、後輩に引き継ごう。新しい「伝統」として。=神宮(野田枝里子)

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