26日開幕のパリ・オリンピックには多くの高級ブランドが参入し、メダルやユニホームなどの意匠を担う。70を超える高級ブランドを傘下に持つフランスのモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)が大会スポンサーを務めている影響が大きく、フランスの「ファッション大国」としての存在感にも注目が集まりそうだ。
LVMH傘下の高級宝飾ブランド「ショーメ」は、パリ五輪・パラリンピックで最大のシンボルともいえるメダルの意匠を手がけた。五輪メダルの中心部はエッフェル塔の金属片を使用し、六角形でフランスの国土を表した。周縁の放射状のデザインは「フランスやアスリートの輝き」を示しているという。
同じく傘下ブランドのルイ・ヴィトンは、メダルや聖火トーチを収納・運搬するためのトランクを製作。メダル授与式でベアラー(運び手)が持つ専用トレーもデザインした。隅に真ちゅうの金具をあしらうなど、いずれも19世紀からの伝統的な造りを踏襲している。また、ベアラーのユニホームもLVMHがデザインした。
五輪日本代表との関連では、フェンシング女子の江村美咲選手(25)が今年5月、LVMH傘下のクリスチャン・ディオールのアンバサダーに就任。「卓越性と精密性」をテーマに、スポーツとファッションを結びつける活動を行っていくという。
LVMHはフランスを代表する巨大資本だ。2024年版の世界長者番付では、ベルナール・アルノー会長と家族が保有資産2330億ドル(約35兆円)で2年連続の首位となった。パリ大会では公式スポンサーの一種「プレミアムパートナー」に名を連ねる。
早稲田大ビジネススクールの長沢伸也教授(ラグジュアリーブランド論)は「日本の大手家電メーカーなどが東京大会でスポンサーを務めたのと同じで、フランスを代表する大会社のLVMHが自国開催の五輪でスポンサーを担うのは自然なことだ。現地では五輪を単なるスポーツ大会ではない『文化の祭典』と捉える向きが強く、それも高級ブランドが参画する動機になっている」と説明する。
また、パリ大会にはフランス以外の高級ブランドも参画している。スイスの高級時計メーカー・オメガはオフィシャルタイムキーパーを務める。米国のラルフローレンなど、自国の代表選手が開閉会式で着るユニホームをデザインしたケースもある。
長沢教授によると、欧米の企業家には恩恵を社会に還元する「ノブレス・オブリージュ」(高貴なる者の義務)という考え方が浸透している。美術館の設立などと同様に、文化活動の舞台に五輪が選ばれているという。「各ブランドは目先の売り上げを求めて広告を出しているというよりも、あくまでも人々とのコミュニケーションの一環として五輪に参加していると捉えるべきだ」と話している。【黒川晋史】
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