(23日、第106回全国高校野球選手権東東京大会準々決勝 修徳4―8関東第一)

 試合がこのまま終わるかに見えた九回、修徳の一卵性の双子である斎藤兄弟が打撃で球場を沸かせた。

 6点差をつけられて迎えた九回表、2死一塁。もう後がない中、9番打者の兄、純(3年)が打席に立った。次打者は弟の紘(ひろ)(同)。「紘につなげば絶対にかえしてくれる。だから、何としても紘につなげる」

 必死で振り抜いた打球は、右前安打に。歓声の中、一塁ベースに立つと、紘に向かって大きくガッツポーズし、「思いきり行け!」とげきを飛ばした。

 甘く入った真ん中低めの直球を、今度は紘が強く振り抜いた。「純の言葉を信じた」。右越え二塁打となり、純を本塁にかえした。

 小学生の頃から、何をするにも一緒だった。ポジションも、ずっと捕手と遊撃手。素振りもキャッチボールも、いつも二人で練習してきた。

 一緒に野球を続けるため、二人で修徳に進んだ。「最後の夏は二人でそろって試合に出よう」と励まし合いながら厳しい練習を乗り越えてきた。

 だが、5月下旬。投げすぎで純がひじを剝離骨折した。痛みは6月下旬になっても引かず、今大会、5回戦まで試合に出られなかった。

 今春の都大会の再戦となった関東第一との準々決勝。純は痛み止めを飲んで、初めて捕手で先発し、二人はようやくそろった。

 九回、二人の連打などで2点を返したが、そこまでだった。スタンドにあいさつしてベンチに戻ると、いつもは泣かない純が号泣していた。紘は笑顔で、純と肩を組んだ。「胸張って、上向いて帰るぞ」。いつもは泣き虫な弟に、最後は励まされた。

 試合後、二人は同じことを口にした。純は「最後に紘に回せてよかった。グラウンドに紘がいたから、つらい練習を乗り越えられた」。紘は「厳しいかなと思ったけど、何とか純が間に合った。二人で試合に出て、二人でやりきれたので後悔はない」。=神宮(佐野楓)

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