(23日、第106回全国高校野球選手権福井大会準々決勝 若狭2―7敦賀気比)

 六回裏、若狭の井根本楓大主将(3年)が三塁の守備についた。背番号は10。四回裏の守備で強烈な打球を受けた中務(なかつかさ)勇翔選手(同)の顔が腫れてきたためだ。

 前日、チームの1番打者で俊足の道根大地選手ら3年生メンバー2人が新型コロナで発熱し、ベンチから外れた。道根選手から「あとは任せた」と託された。

 井根本主将自身も2年生の時に足首を骨折した。新チームで主将に選ばれたが、苦しい思いを顔に出さず、誰よりも明るく声を出してチームを引っ張ってきた。

 この日の相手はエース竹下海斗投手(同)を擁する敦賀気比。井根本主将は「簡単に打てないが、それでも点を取る練習を積んできた」という。

 2点を追う四回表の攻撃で、その成果が出た。先頭の時田諒選手(2年)が敵失で出塁。藤田陽斗選手(3年)のバント安打がさらに敵失を誘い、無死二、三塁の好機をつくると、福永尚史選手(同)のバント安打で1点をかえした。さらに的場絢平選手(2年)がスクイズを決め、同点に追いついた。後続の2人も徹底してバントで攻め、相手を揺さぶった。

 井根本主将は「けがやコロナで交代した3年生みんなでもう一度野球をするには、甲子園に行くしかないが、かなわなかった。でも春に完封された相手から2点を取り、成長した姿を見せられた」と話すと、涙が止まらなくなった。(鎌内勇樹)

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