第106回全国高校野球選手権群馬大会は21日は3回戦の残る4試合があり、8強が出そろった。東農大二は九回の逆転劇で桐生市商を下した。残る3校はシード校が勝ち上がった。樹徳は高崎を接戦の末に破り、明和県央と前橋育英はともにコールドで8強入りした。22日に準々決勝2試合がある。

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(21日、第106回全国高校野球選手権群馬大会3回戦 高崎1-2樹徳)

 野球のチーム戦力は投手力、守備力、攻撃力、機動力の四つに、総合力を加えたレーダーチャートで表される。だが高崎にはもう一つ、相手戦力の「分析力」がある。作戦立案の中心にいるのが広田凜太郎(3年)だ。

 相手投手の配球は。打者はどんな球に手を出してくるか。守備位置をどう動かすか……。偵察班を率い、撮影した映像を時に徹夜で分析し、相手戦力を丸裸にする。

 そのすさまじさを見せつけたのが、2回戦の館林商工戦だ。打者の苦手な球種やコースを突き、一~三回の九つのアウトをすべて三振で奪った。

 この日も分析力が光った。当初は相手投手のスライダーを警戒し、「序盤は球数を投げさせる作戦でした」。だが、立ち上がりの球の伸びがいま一つだと見抜くと即座に積極攻撃に切り替え、二回に1点を先取した。

 しかし、六回と八回にいずれも失策で出した走者の生還を許し、逆転された。九回に一打逆転の好機を作ったが、あと1本が出なかった。

 背番号19の広田。公式戦の出場機会はなく、最後の夏もスコアボードに名前が表示されることはなかった。しかし、ベンチから、誰よりも大きな声でチームを鼓舞してきた。試合後、2失策を犯してしまった二塁手の斎藤樹(3年)が泣き崩れていた。敗戦の責任を背負おうとする斎藤に1人寄り添い、励まし続けていた。「誰の責任じゃない。死にものぐるいで頑張った結果です」

 広田が作戦参謀を務めた高崎は、第3シードの樹徳と互角に渡り合った。鍛え上げた戦闘力に分析力を加えた屈指の進学校・高崎。堂々と戦い、堂々と散った。(抜井規泰)

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(21日、第106回全国高校野球選手権群馬大会3回戦 前橋2-9前橋育英※8回コールド)

 6点差をつけられた八回裏。前橋の遊撃手・林昇史(3年)は近くに飛んできた打球にグラブを伸ばしたが、届かなかった。頭上を超え、サヨナラの一打となった。

 県内屈指の進学校で練習時間が限られる前橋は、質の高い練習にこだわってきた。1球への執着を強く持ち、打撃練習では一球一球を高い集中力で振り、持ち味の強打を練り上げてきた。

 林は1年の秋から試合に出ており、昨夏の群馬大会も経験。今大会はチームを引っ張る立場だった。リードされても、「みんながリラックスできるよう最後までとにかく笑顔で楽しく」と、他の選手を鼓舞し続けた。

 だが、この日は相手の巧みな投球と強力打線に「実力が及ばなかった」。試合後、悔しさを見せながら、後輩に希望を託した。「私立を倒すのは生半可じゃない覚悟が要る。敗因を来年に生かしてほしい」(中沢絢乃)

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(21日、第106回全国高校野球選手権群馬大会3回戦 東農大二2-1桐生市商)

 桐生市商の左翼手・石田迅(3年)は父と兄が同校野球部の元選手、母は元マネジャー。「打倒私立」を目標にしてきた家族を追い、入部した。この日は「見逃しはするな。全部振れ」との兄の助言を胸に甘い球を狙ったが惜しくも無安打。3年間を振り返り「これだけ戦えたのは応援してくれた人たちのおかげ。この学校に入って本当によかった」。息子が奮闘する姿を見守った両親は「ここまで応援させてもらって、楽しませてくれて、ありがとう。これからも一家で桐生商業を応援し続けます」と話した。(中沢絢乃)

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