(21日、第106回全国高校野球選手権石川大会3回戦 飯田2―9金沢)

 試合後、負けた飯田の選手たちが、金沢市民野球場の外で輪になって腰を下ろす。加瀬悠貴監督(33)の話に耳を傾けた。

 加瀬監督は今春、高校野球の監督に初めて就任した。「君たちで本当によかった」と語り始めた。

 千葉県出身で元球児。2020年に飯田高校がある石川県珠洲市に移住した。農家の手伝いや居酒屋などで働く中、能登半島地震が起きた。自宅は全壊。職場の居酒屋で寝泊まりしながら4月、元監督の他校への異動などを受けて監督に就任した。

 3年生10人、2年生3人、1年生1人で迎えた夏の大会。どの選手も地震の被害を受けた。

 コールド負けに涙する選手たちに「1月に震災があって、『楽しんで野球をやる』っていうのが目標だったと思う。それができてよかった」と語りかけた。「震災からこれだけやったのは奇跡に近い。今後の人生でも、楽しむということを忘れずにいてほしい」

 そう言うと、加瀬監督は一人ひとりと抱き合い、「いつも元気でやってくれてありがとう」などと声をかけていった。

 山田恵大主将(3年)は「震災の被害があるなかで、(監督は)自分たちの支えになっていました。本当にありがとうございました」と話した。(小崎瑶太)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。