米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が打撃練習にクリケットのバットを取り入れていると報道され、「クリケットのまち」栃木県佐野市が脚光を浴びている。追加競技となった4年後の米ロサンゼルス夏季五輪に向け、知名度アップと普及に尽力する日本クリケット協会事務局長の宮地直樹さん(45)=佐野市=は「競技名を挙げてくれたことは本当にありがたい」と感謝している。(梅村武史)

 クリケット 13世紀ごろの英国で羊飼いの遊びとして始まったとされ、野球の原型とも言われる。インド、オーストラリア、南アフリカなど英連邦諸国で人気が高く、インドのプロリーグは、北米四大プロスポーツリーグに匹敵する興行規模を誇る。世界の競技人口ではサッカーに次ぐ第2位で3億人以上。日本クリケット協会によると国内の競技人口は約4000人。

クリケットバットを手に選手らと語る宮地事務局長(左)

◆大活躍の試合後のインタビューで

 大谷選手が「クリケットのバットを練習に取り入れた」と語ったのは4月9日、第3号本塁打と長打2本を放った試合前のインタビューだった。クリケットバットは打撃面がフラットで、ボールを面で捉える意識付けのために取り入れたという。 2000年から13年間、クリケット日本代表としてプレーした宮地さんは「左翼方向に本塁打を放つときの大谷選手のフォームがクリケット選手の腕使いと似ている」と分析。「体重の乗せ方、ボールの捉え方が参考になるのでは。クロストレーニング(専門以外のスポーツを取り入れた練習)として有効かもしれません」と話す。

佐野市国際クリケット場での試合風景

◆クリケット関連がトレンド入り

 報道後、協会にはメディアからの問い合わせが殺到した。宮地さんの集計で、テレビの情報番組で37件も取り上げられ、交流サイト(SNS)でもクリケット関連がトレンド入り。認知度の低さが悩みだったが、「スポーツにあまり関心の無い層にも注目してもらった」と喜ぶ。  国内のクリケット第一人者の宮地さんとの縁から、市や地元経済団体、住民を挙げての「クリケットのまち」推進は07年ごろから始まった。地元小学校で競技を伝える活動を始め、10年に協会本部事務所を市に誘致。11年にサポータークラブが発足し、18年には国際規格に合わせた国内唯一の天然芝の市国際クリケット場が完成した。現在は九つのピッチが市内にある。

佐野市役所前駐車場に掲げられた懸垂幕

◆「要望あればバットを送りたい」

 昨秋、28年ロサンゼルス夏季五輪の追加競技に決まり歓喜に沸いた。世界的スター選手の発言を追い風に普及活動を加速させたい思いだ。宮地さんは「いつでも佐野の練習場を提供するし、要望があればバットを送りたい」と、大谷選手に熱いエールを送る。  クリケットバットは重さ1.2キロ前後。価格は2万円前後から10万円超のプロ仕様まで。協会ではクリケット全般のアドバイスに幅広く対応し、バット購入希望者に販売店も紹介する。問い合わせは、日本クリケット協会=電050(3766)4483=へ。 

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