(20日、第106回全国高校野球選手権熊本大会準々決勝、熊本国府7―6専大熊本)

 「俺たちには勢いがある、逆転できる」。6点を追う八回表、専大熊本の選手たちは虚勢ではなく、本心からそう信じて攻撃に臨んだ。

 準優勝した春の県大会でも、今大会3回戦でも点差をつけられたゲームを後半で逆転してきた。「後ろには良い打者がたくさんいる。どんな形でも出塁しよう」。先頭打者の坂本稀偉(けい)主将(3年)は2ストライクから3回ファウルを打って粘り、四球での出塁をもぎ取った。仲間たちが適時三塁打などで続き、まずは3点差に詰めた。

 九回には無死一塁で打席に。絶対に打つと気合を込めて3球目を振り抜くと、打球は右前に落ちた。坂本主将たちが広げた好機を、後続の打者が適時打で生かして同点に。この夏2度目の逆転勝利に目前まで迫った。

 最後は第1シードの熊本国府の執念が勝り、サヨナラで敗れたが、主将の2打席で引き出されたチームの勢いを、藤崎台に刻んでいった。

 県内だけでなく福岡、広島、山口など様々な地域から集まった80人を超える部員たちを率いるのは苦労だらけだった。「言うことは聞かないし、指示は通らないし」。こんなチームは嫌いだと思っていた。でも、大会期間中は「こいつらと一緒にもっと野球がしたい」と思えた。「本当は、このチームのことが好きなんです」。悔しさで唇をかみしめていた顔に、少し笑みが浮かんだ。(吉田啓)

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