豊富な運動量で横浜Mをけん引する喜田㊧(2020年8月撮影)

<取材ノート>
 梅雨空にも勝る重苦しさが試合後の取材エリアを覆った。サッカーJ1の横浜Mが決定力を欠いて0ー1で敗れた3日の鳥栖戦。うつむきがちに現れた横浜Mの主将、喜田拓也(29)は「甘いっすね」と強い口調で切り出した。常勝を期待される名門がこの時点でまさかの3連敗。湧き上がるふがいなさや怒りを表に出さないようにこらえながら言葉をつないだ。  「誰がチームを救おうとしたか。誰が最後まで食らいついてやろうとしたか」。劣勢の場面で走るのを緩めてしまう、勝利を諦めるかのような味方の姿勢に憤りを隠さなかった。  試合中は鬼気迫る態度でチームを奮い立たせた。失点直後の後半12分。「形とかうんぬんじゃない」と持ち場を離れて、ピッチ中央から敵陣の最深部まで1人でボールを追い回した。猛然と向かってくる迫力に相手はたまらず外に蹴り出す。プレーが途切れると、味方に向き直り、両手を振り上げて何度もほえた。  育成組織からマリノス一筋の29歳。Jリーグ発足時からJ1に居続けるクラブを誇りに思い、勝たせる責任感を強く抱く。「このユニホームを着て戦いたい人は山ほどいる。それを感じないといけない」。愛着が深いからこそ、誰よりも低迷にあらがう。  14日の鹿島戦は「メッセージを込めた」と開始早々に果敢にシュートを放ち、立ち向かう姿勢を率先して示した。チームは体を張り、ボールに飛びつき、難敵を4ー1で下して連敗を4で止めた。上位進出の道は険しい。「全てを乗り越えて勝つしかない」。主将の表情が大きく緩むことはなかった。(加藤健太) 

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