(19日、第106回全国高校野球選手権大阪大会3回戦 桜宮5―0寝屋川)
六回表、連打を浴びて2死一、二塁。相手の打者はこの日3安打。寝屋川のエース市野雅晴投手(3年)は、自分に言い聞かせた。
「びびったらあかん」
強気に、持ち味のシュート回転を生かした直球をインコースへ。内野ゴロに打ち取ると、ほっとして笑顔を見せた。
本当は、高校で投手をやるつもりはなかった。
中学3年のとき、軟式野球の近畿大会に投手として出場した。準々決勝、2死二塁の場面で、捕手からは直球のサインが出た。直球は苦手で思わず首を振る。得意なスライダーを投げると、打球は外野手の頭を越えた。
チームはその1失点で負けた。
今でもその試合は鮮明に覚えている。自分のせいで負けた責任を感じた。自信も失った。
高校では内野手としてプレーしていたが、岡田泰典監督から投手向きだと勧められた。
乗り気じゃなかった。でも投げたら、先輩や仲間が「いい球ほうるな」と褒めてくれた。
場数を踏むうちに板についてきた。三振を奪ったりピンチを抑えたりしたときの、味方の声援が一番の励みになった。
この日、初回は力んで2失点したが、その後は「逃げるピッチングじゃなく攻めるピッチングでいこう」と楽しさを前面に出し、六回まで無失点に抑えた。
七回に長打を浴びて降板し、チームは相手投手を攻略できず敗れた。
相手校の校歌を聞きながら、何度も袖で目元をぬぐった。
「悔いは残るけど、投手で締めくくれてよかった」。一度失敗してもそこで終わらせず、次にどう生かせるか。そのことを高校野球を通じて考えられるようになった。
薬剤師という夢に向かって、「あきらめへん大人」になろう。そう決意を新たにした一日になった。(西晃奈)
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