パリ五輪・パラリンピックを目前に控え、新しい風が吹いている。競技団体が開く代表選手会見にオリとパラで互いの選手、指導者が同席する姿が増えた。3年前の東京大会で掲げられた「多様性と調和」の理念が、広がりを見せる。(兼村優希)

◆「ともに闘おう」「勝ちに対する思いは同じ」

 今月2日、東京・講道館。視覚障害者柔道のパリ・パラ代表内定選手の隣に、五輪代表の鈴木桂治、増地克之の男女両監督がいた。「ともに日本代表としての誇りを持ち、一緒に戦おう」と激励しに来ていた。全日本柔道連盟(全柔連)側からの打診があり、初めて実現したという。

視覚障害者柔道のパリ・パラリンピック内定選手会見に同席した柔道パリ五輪代表の鈴木桂治(中)、増地克之(左)両監督。右は広瀬順子

 会見では女子48キロ級(全盲)の半谷(はんがい)静香(トヨタループス)が両監督へ「現役時代に勝つために一番重要だと考えていたことは」と質問をぶつけた。「試合当日にピークを持っていくこと」「勝たなきゃもったいないと思うこと」と答えてもらった半谷は、「パラと五輪では背景が違うけれど、勝ちに対する気持ちはきっと同じ」とうなずいた。

◆「金」獲得へ「五輪式」ノウハウを

 日本のお家芸として五輪を何度も制してきた柔道。一方、パラリンピックは2012年ロンドン大会を最後に、金メダルが途絶えている。日本視覚障害者柔道連盟(視柔連)は昨夏、強化体制を一新。全柔連の科学研究部で映像分析を担った佐藤伸一郎さんを新たに強化委員長に招き、”五輪式”のノウハウを取り入れることに。より個々の力を磨くため、選手が拠点を置く各地方へ強化陣が出向く機会を増やした。国際大会では映像分析について両連盟の担当者が情報交換もした。  その成果もあり、最新の世界ランキングで男子73キロ級(弱視)の瀬戸勇次郎(九星飲料工業)が1位、女子57キロ級(弱視)の広瀬順子(SMBC日興証券)が3位につける。視柔連は「今後はオリパラに限らず(聴覚障害者の)デフ柔道も含めた合同合宿ができれば」と展望を描く。

会見後、写真撮影に臨むパリ五輪、パラリンピックの日本代表選手ら

 同様に、オリパラ連携を積極的に進めているのが卓球だ。今月12日に東京都内であったパリ五輪代表6人の会見に、パラ代表9人も同席。意気込みなどを順番に答えた。

◆合宿中、選手同士の交流も生まれた

 22年春から、日本卓球協会の宮崎義仁専務理事が日本肢体不自由者卓球協会の強化責任者に就くなど、五輪関係者がパラ選手の強化に関わるようになった。ナショナルトレーニングセンター(NTC)での合宿期間が重なれば、張本智和(智和企画)ら健常者のトップ選手がパラ選手と談笑したり、車いすを体験したりと交流も生まれた。男子車いす4クラスの七野一輝(オカムラ)は「健常者の知識を持った方がパラも同じように強化してくれるので、ありがたい」と受け止める。  パリ五輪で実施される32競技のうち、パラリンピックにも同様か類似した競技があるのは20。強化と共生社会を両輪で進めるオリパラ連携の動きは、さらに進んでいくだろうか。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。