打席に立つ松原主将=八王子市で

 夏の甲子園出場を懸けた全国高校野球選手権西東京大会の4回戦で17日、昨年優勝の日大三が、国士舘に9-3で勝利した。国士舘にとっては昨夏14点差で大敗を喫した「因縁の相手」。最後は振り切られたものの中盤までリードするなど成長した姿を見せた。(昆野夏子)  国士舘の松原虎太主将(3年)は昨夏、副応援団長としてスタンドにいた。相手はこの日と同じ日大三。2-16の五回コールド負けだった。「手も足も出なかった」。うなだれる先輩たちを、スタンドから見つめていた。  新チームで主将に選ばれた。口にはしなかったが、いつも日大三の試合が気になり、動画やスコアを確認して研究した。「次こそは絶対に負けたくない」。最後の夏、4回戦で日大三と当たることに。「運命だな、って」。強い気持ちでチームをまとめ上げた。  試合は国士舘が序盤からリードする展開。五回、日大三が、打者10人の猛攻で一挙6点を奪うと、流れを引き寄せた。  九回2死、国士舘の攻撃。打席に入ったのは松原主将だった。初球を思い切りスイングした。外角低めのスライダー。高く打ち上げた。「あ、終わっちゃったな」。遊撃手が捕球したのを確認すると、うつむいた。最後の打者になり、試合は終わった。  「去年とは違う。勝てるという手応えがあった」。点差が開いてからも円陣の中心やベンチから必死に声を出した。「気持ちで行くぞ」「絶対に勝つぞ」。誰も諦めず、最後まで勝利を信じた。  野球は高校で終わりにし、もう続けない。「負けたけど、まだ実感がない。これから悲しくなるのかな」。この1年、仲間と必死に汗を流し、少し近づいた日大三の壁。目標には届かなかったが、小さな笑みを残して、球場を去った。


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