第106回全国高校野球選手権愛媛大会は、7月13日に開幕し、55校の48チームが出場する。一つの目的に向かって力を合わせる、個性豊かな選手らの姿を紹介する。

愛媛大付・小笠原夕月選手

 松山市の愛媛大付属高校野球部の捕手、小笠原夕月(ゆづき)選手(3年)は1年の夏、本塁からマウンドほどの距離がうまく投げられなくなった。親指が引っかかり、ボールを地面にたたきつけてしまう。塁間以上の距離だと普通に投げられるが、近くだとできない。

 当時、捕手は自分1人。試合では親指を使わずに、人さし指と中指だけでふわりと返球した。「野球が楽しくなくなった。続けるか迷った」

 小学校はソフトボール、中学では軟式野球に打ち込み、ポジションはずっと捕手。「やっぱり野球をやめたくない。キャッチャーも続けたい」

 解決方法を調べて実行した。ボールをわざと地面にたたきつけたり、仰向けに寝転んで上へ投げたりした。壁を相手に、ボールのリリースの感覚を意識して投げ込んだ。

 1年の年明けごろ、症状が急に改善した。「やっと普通に野球ができる」。投手の配球や自分の打撃についても考えられるようになった。表情に明るさが戻った。

 その後もたまに症状は表れた。逆戻りの不安はあったが、考えないように努めた。「完治した」と思えたのは今春だ。

 「あれ以上つらいことはない。試合でミスしても、練習したら乗り越えられるという自信になった」。チームメートの励ましは忘れられない。

 正捕手として迎える夏の大会。不安はまったくない。「最後の集大成なんで楽しんで、自分のプレーを全部発揮できるようにしたい」(中川壮)

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