「娘」と思って7年、ずっと連れ添ってきた。
パラリンピックの陸上女子走り幅跳びに出場する中西麻耶(39)=鶴学園クラブ。その競技生活はラブラドルレトリバーのSARAH(サラ)に支えられてきた。
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2017年、大分県の実家で飼い始めた。活動拠点を移すようになってからもずっと一緒。大会などの遠征で家を留守にする際は、ドッグトレーナーや動物病院に預かってもらった。
自国開催の東京パラリンピックを控えた19年、世界選手権で初の金メダルを獲得した。それ以降、取り巻く環境は大きく変わった。一気に注目度は高まり、メディアへの露出が増えた。
当時はプロとして活動していた。支援者から期待されるのはありがたいが、期待に応えられなければがっかりされる現実も知った。調子がいい時に寄ってきた人は、そうじゃなくなれば離れていった。
1人になると気持ちの整理ができず、考え込んでしまうこともあった。ただ、どんな時もSARAHは変わらず自分を受け入れてくれた。散歩に行けば楽しそうに尻尾をふりながら闊歩(かっぽ)するし、家ではおなかを出して無防備に寝る。見ていると、「悩んでいるのが馬鹿らしくなってきた」。
行き詰まりそうな競技者としての自分に、別の世界との縁を作ってくれたのがSARAHだった。飼い主として出会った人たちにとって、自分は単にSARAHの「ママ」。アスリートではない姿で交流できる貴重な機会になった。
昨秋にはプロとしての活動をやめると宣言。自身のSNSアカウントも閉じた。自由になった分、「娘」と過ごす時間が増え、精神的な充実感は増した気がする。
今住んでいる広島県東広島市に移ってからは、新たに猫のLANA(ラナ)を家族に迎え入れた。SARAHからすればLANAは妹。日に日に仲良くなっていく「2人」をいとおしく感じる。
今年5月に神戸で行われた世界選手権では3位に入った。まだ手にしていない、パラのメダル獲得の可能性を示した。集大成と位置づけるパリで、「ママは頑張るよ」。これまでで最高の結果を、“家族”に報告するつもりだ。(松本龍三郎)
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