(15日、第106回全国高校野球選手権東東京大会3回戦 岩倉5―9二松学舎大付 延長タイブレーク十回)
延長十回表、無死満塁。「いつも通りの投球をすれば大丈夫だ」。岩倉の2番手投手、佐竹翔太投手(2年)は自分に言い聞かせていた。
だが、内角低めを狙った初球は、力みすぎて高く浮いてしまった。直球を待っていた二松学舎大付の2番・岡部雄大(3年)が振り抜くと、打球は右翼席へ。勝利が大きく遠のく4点に、佐竹はぼうぜんと立ち尽くした。「なんで、あそこに投げてしまったんだろう」
5点差からの同点劇の立役者だった。先発したのはエースの上原慶大(2年)。三回途中、4点を奪われたところで降板し、佐竹がマウンドに上がった。
相手は優勝候補の一角。だが、「相手の勢いに負けずに投げよう」と、持ち味である勢いのある直球を中心に自分の投球をしようと心がけた。
佐竹はその回、1点を失ったものの四回以降、0点に抑えた。相手打者の1巡目では外角、2巡目からは内角を攻め、的を絞らせない工夫もした。
佐竹の力投に打線も応えた。六回に3点を返すと、八回には、主将の高橋梁(3年)のセーフティースクイズを含む4連続のバントで相手の意表を突き、同点に追いついた。
「自分が抑えれば、仲間たちがきっと決めてくれる」。そう信じて投げ続けたが十回、1球の失投が勝負を分けた。
2時間27分の激闘に終止符が打たれた瞬間、佐竹はベンチで涙を抑えられなかった。「二松学舎大付の打線は粘り強くて、自分が打たれたホームランで試合が終わった。1球の大切さを改めて感じた」。試合後、真っ赤に目を腫らしながら話した。
ただ、豊田浩之監督は試合を立て直した佐竹の投球をねぎらった。「期待以上にやってくれた」。悔しさを晴らすチャンスは、まだ1回ある。=神宮(佐野楓)
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