(第106回全国高校野球静岡大会)

 「部活動対抗リレーで1位をとることができました」

 静岡県立小山高校野球部のインスタグラム(写真や動画が投稿できるSNS)に野球部員たちのとびっきりの笑顔が踊った。今月上旬の学校行事「笙陵祭」の報告だ。県東部の小山町は富士山のある町。等身大の部員たちの日常をつづるインスタでは季節ごとに違う顔を見せる大きな富士山も時折顔を出す。

 野球部のインスタは、2021年1月、学校の広報も担当している土屋将平監督(27)の発案で始めた。この時の部員は1、2年生6人。「地元中学生たちのあこがれの対象になり、部員が増えるように」との思いを込めた。

 現在は3年生のマネジャー岩田あさひさんが担当する。投稿に登場するのは、「つらいことも楽しむ」という日々の練習だけでなく、一緒に食べたスイカや、スプリンクラーの放水に架かる虹、ちょっといびつな雪だるま……。「撮りたいな、かっこいいな、富士山ばえるな」と思った時、スマートフォンのシャッターを切る。

 町内で唯一の高校だ。「応援されるチーム」になるために、河川清掃やマラソン大会のボランティア、小学生向け野球教室に奮闘する部員の姿も積極的に紹介している。練習試合や公式戦の結果を伝える投稿では、3年生が交代で「振り返り」を書く。

 「プレーを言語化する練習になる」と高橋健斗選手。小野蒼一郎主将も「興味を持ってもらうのにいいツールになっている」と話す。「インスタを見た」と住民や中学生が試合に足を運んでくれるようになり、今は部員が24人に増えた。

 部員たちの自然な表情を撮る岩田さんは小学生の時、野球スポーツ少年団「北郷ファイターズ」で小野主将ら同学年3人と一緒にプレー。中学では強豪の硬式女子野球チーム「スルガマリンガールズ」で野球に打ち込んだが、高校では野球を始めた頃の仲間たちと部活を一緒にやりたい、と入部した。

 開幕を前に、岩田さんはインスタで24人の部員一人ひとりを日々紹介するシリーズを始めた。1点差で負けていた最終回に三塁打を放った高橋翔選手など、一押しの写真を選んで添えている。岩田さん自身の写真はノックを打つかっこいい姿だ。

 昨夏の大会であと一歩のところで届かなかった16強の目標達成へ、部員たちは思い入れのある写真でも気持ちを高め、初戦に臨む。(斉藤智子)

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