(12日、第106回全国高校野球選手権福岡大会4回戦 育徳館4―5福岡大若葉)

 1―0の小倉東戦を制した完封劇から4日。育徳館の2年生バッテリーは、この日も試合を楽しんでいた。最速130キロ前後の直球とカーブ、スライダーが持ち球の島汰唯也(だいや)投手は、細かい配球は考えず、「どんどん投げて、ぽんぽん打たせる」作戦だった。

 チームは八回表、一挙3得点で福岡大若葉に追いつき、試合の流れをつかんだかに見えた。だが、その裏、先頭打者に単打を許す。次打者は前の打席で三塁打を打たれた3番だ。仲間たちがマウンドに集まってきてくれた。三塁手の田原碧人選手(3年)は背中に手をそえてくれた。

 「打たしてこい」「気持ちだぞ」。先輩たちにはマウンドで何度もこう励まされた。隅田勇輝捕手らに「お前ならいける」と気合を入れてもらってきた。3番打者への2球目は内野ゴロとなり、併殺。先輩に感謝した。「めっちゃ投げやすいな」

 延長十回タイブレークに突入した。先頭打者の打ち損じが自分の元に転がってきた。グラブに収め、二塁走者をアウトにしようとした三塁への送球がずれた。グラウンドにボールが転がる間に走者がかえり、思わぬサヨナラ負け。試合後、「3年生のために勝ちたかった」と島投手は肩をふるわし、嗚咽(おえつ)を漏らした。

 試合中、2年生バッテリーを何度も励ました後藤大翔主将(3年)は「いつも通り堂々と投げてくれていた。あいつらがいなかったら、今の自分たちもないと思う」と語った。(中村有紀子)

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