7月10日に開幕した第106回全国高校野球選手権香川大会の注目点の一つが、春の選抜大会から本格導入された「新基準バット」の影響だ。春の香川県大会では全35試合のうち、本塁打の数が1本にとどまるなど、試合への影響が指摘される。

 新基準バットとは、従来のバットより最大直径を細くするなどして、反発力を抑えた金属バットのことだ。投手のけが防止や負担減などが導入のねらい。夏の地方大会で本格使用されるのは初めてとなる。

 朝日新聞が香川大会に出場する37校の監督を対象に実施したアンケートでは、30校の監督が新基準バットで高校野球が「変わる」と回答した。

 具体的には「ロースコアの試合が増えるので采配が変わる」(丸亀城西)、「今までの大味な野球は影を潜めそう」(香川高専高松)、「守備力の高さが問われるようになる」(大手前高松)などの意見が上がった。

 「ホームランが減って、本来重視されるべき走塁やバントなどの戦略が脚光を浴びる」(高松北)など、「飛ばないバット」を肯定的に受け止める声もあった。

 新基準バットで打球がどう変化したかについても尋ねた。

 「打球が失速し、外野を越えるヒットが出ない」(高松工芸)、「芯で正確に捉えないと、良い打球は飛ばない」(観音寺一)などの意見のほか、「バットの先で打った時の音と変わらないので、打球判断が難しくなった」(寒川)など、守備面での苦慮をにじませる声もあった。

 新基準バット導入前の23年の春の香川大会の本塁打数は10本、22年は11本だった。今年の春の大会では、2点差以下の僅差(きんさ)の試合が10試合あり、高い軌道の打球がフェンス前で失速する場面が多い印象だった。

 新基準バットの採用で得点がどうなるについて尋ねると、30校が「得点は減少する」、3校が「大幅に減少する」と答えた。

 その上で、得点のために必要なことは何かと問うと、多数の学校が「機動力や守備力の向上」「打撃技術の向上」と回答した。

 各校はどう対策しているのか。津田高を訪ねると、新基準バットよりも細い鉄のバットを使い、公式球よりも小さなボールを打つ練習を取り入れていた。

 中塚智也監督は「芯で捉えれば飛距離は変わらず、芯で捉えることを意識づけたい」、岡田遥希主将は「最初は全然飛ばない選手がほとんどだったが、やっていくうちにだんだんと慣れてきた気がする」と話した。

 アンケートでは、「(機動力向上のために)バントや盗塁の練習を増やした」、「筋力トレーニングを増やした」などの回答もあり、試行錯誤する様子もうかがわれた。

経済的負担に苦慮する様子も

 アンケートでは、経済面でも苦慮している様子が明らかになった。

 新基準バットの採用で「経済的負担は大きくなるか」という質問に対し、37校中33校が「大きくなる」と回答した。

 理由として「1本当たりの価格が倍増し、非常に負担が重くなった」(香川高専高松)、「野球用具すべてが値上がりしているので、負担は大きい」(石田)などの意見が上がった。

 新基準バットの価格は1本3万~4万円程度で、従来のバットよりも1万円ほど高いとされる。

 こうした負担増が影響しているとみられるのが、各校が保有する新基準バットの本数だ。

 回答のあった35校のうち、最も多い学校は20本、最も少ない学校は4本で、平均は8.8本だった。

 試合メンバー9人に1人1本も行き渡っていない計算で、選手がバットに慣れる機会に苦慮している様子がうかがえた。

 日本高野連は昨年、全国の加盟校の負担を軽減するため、各校に無料で3本配布した。4本目以上が各校が部費などで購入したバットだ。

 各校は、貴重な新基準バットを効果的に使おうと努力している。

 マネジャーを除いた約40人の高松北にある新基準バットは5本。秦敏博監督は「新基準バットは基本的に試合や実戦形式の練習のときだけ使う。普段の練習では木製や竹バットを使って練習している」と話す。

 学校関係者によると、最近の物価高で、ボールやスパイクなど野球用具のほとんどすべてが値上がりしている。アンケートでは、「(新基準バット導入で)野球の人気低迷に拍車がかからないか心配」(高瀬)という意見もあった。(和田翔太)

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