(9日、第106回全国高校野球選手権大分大会1回戦 大分鶴崎6―11情報科学)

 六回裏、マウンド上の大分鶴崎・石和巧望(たくみ)投手は額の汗をぬぐい、肩で大きく呼吸する。球数は90球に達していた。「やばいかもしれない」

 下手投げで球速は70~110キロの変則投手だ。高校1年の終わりごろ、悪送球を克服しようと横手投げにしたが、調子は上がらなかった。昨秋、上尾(あがりお)隆一(たかいち)監督が「アンダースローで頑張ってみないか」と転向を促した。

 「自分が最後の夏に活躍できるならどんな手を使ってでも」と考えて下手投げに挑戦。特に右足の重心を意識してフォームを修正することで、制球が良くなったという。上尾監督は、下から浮いて沈むボールが決まれば打たれない「魔球」と評価する。

 この試合、エースに代わって先発を託された。初回こそ3失点したが、80キロ台の変化球を中心に相手打線を翻弄(ほんろう)。五回裏は6球で三者凡退に打ち取った。

 味方打線の援護も受けて、2点をリードで迎えた六回裏のマウンド。最初から制球が定まらなかった。この回の先頭打者を四球で出し、次打者には死球を与えて交代。継投した後輩投手も打たれて5点を失った。上尾監督は「交代のタイミングを見誤った」と悔やむ。

 石和投手は試合後、「走者を後輩に押しつけた形になったのが申し訳ない。自分のベストゲームだったが一番悔しかった」と涙を流した。(大村久)

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