(7日、第106回全国高校野球選手権岐阜大会1回戦、県岐阜商5―1高山西)

 春の岐阜大会の王者相手に好投していた高山西の高橋俊二投手(3年)は三回、二死満塁のピンチを迎えた。打席には県岐阜商の4番・坂口路歩選手(2年)。「要注意」。試合前からマークしていた強打者だ。全力で投じたスライダーで、三振に打ち取った。

 練習環境が恵まれているとは言えない。学校のグラウンドは狭く、校外の公共グラウンドを借りる。冬は積雪でグラウンドが使えず、他県で練習することもある。

 そんな冬場は室内でスクワットやベンチプレスなどウェートトレーニングに励む。筋力をつけ、球速は昨秋から10キロ増の最速145キロに。速球を武器に県内でも指折りの投手になった。

 県岐阜商には昨秋の練習試合で大敗した。「7連打ぐらい食らって20対1で負けました」。冬を乗り越え、この試合にかける思いは強かった。

 だが県岐阜商はじわじわと攻めてくる。互いに得点を許さず、緊迫した試合が続くなかで迎えた五回。再び満塁のピンチ、そして打席にはまたもや坂口選手。思わず力んでしまった。押し出しの四球などでこの回4失点。六回で降板した。「自分のせいで負けた。申し訳ない」

 雪辱戦は終わってみれば1対5。だが安打数は相手を上回った。「積み重ねてきたものが出せた。しっかり勝負になった。成長できたかなと思います」。結果以上に手応えも感じた試合だった。

 ベンチ入り20人のうち3年生は自分を含めて5人。もぎ取った八回の1点も水本星冴選手(2年)と滝村武蔵選手(2年)の安打からうまれた。「2年生が奮起してくれた。ありがたかった」

 最後の夏を終え、意志を継ぐ後輩たちに声をかけるとしたら。「まずは『自分たちについてきてくれてありがとう』です。下はだいぶ強いと思うんで、『頑張れよ』です」。(高原敦)

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