(7日、第106回全国高校野球選手権京都大会1回戦 宮津天橋5―1福知山)
サードの前に緩いゴロ、ショートには少し速い打球……。ゆっくりと、右に、左に打ち分ける。
試合前、内野に散った福知山の選手たちにノックをしたのは、マネジャーの藤本美優さん(3年)。5分ほどで、内野手へのノックを終えると、グラウンドに一礼し、ベンチへ退いた。
小学生のころから軟式野球に打ち込んだ。高校2年の春ごろ、監督からノッカーの打診を受けた。
試合前のノックは、選手が体を動かし、本番に備える大切な時間だ。グラウンドの状態を確かめる場でもある。
「選手の迷惑にならないかな」と、不安もあったが、マネジャーの役割を果たしながら、全体練習の後にバットを振った。やがて、練習試合や春の府大会でノッカーを任されるようになった。
迎えた最後の夏。
この試合を笑顔で楽しんでほしい――。選手一人一人の顔を見て、声をかけながら、ノックをした。
チームは初回に先制したものの、四回に点を奪われ劣勢に。それでも選手たちは、大きな声を掛けあい、最後まで諦めなかった。
そんな仲間の姿を応援席から見て、打球に込めた思いが届いた、と感じた。「楽しかった。ずっと忘れられない5分間になりました」(八百板一平)
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