【日本-オーストラリア】試合を終えた町田瑠唯=北海きたえーるで2024年6月21日、貝塚太一撮影
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 女子バスケットボール界屈指のスターが日本代表に帰ってきた。パリ・オリンピック(26日開幕)の日本代表に選出された町田瑠唯選手(富士通)。銀メダル獲得の原動力となった2021年東京五輪後、日本代表から約3年間遠ざかった31歳が2大会連続の五輪切符を引き寄せたのは、メンバー発表直前に「第2の故郷」で行われた強化試合だった。

 日本(世界ランキング9位)は6月20、21日、札幌市・北海きたえーるでオーストラリア(同3位)と強化試合を行い2連勝。格上の相手は主力を欠いていたとはいえ、五輪へ弾みを付けた。

 収穫は結果だけではない。6月上旬の中国との強化試合で東京五輪以来の代表復帰を果たした町田選手の確かなステップアップを確認できた点も大きかった。

【日本-オーストラリア】前半終了間際、ブザービーターを決め笑顔を見せる町田瑠唯(右から2人目)=北海きたえーるで2024年6月20日、貝塚太一撮影
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 町田選手は東京五輪では、準決勝のフランス戦で五輪最多の18アシストを挙げ、大会ベスト5に選出されるなど活躍。身長162センチと小柄ながら、司令塔のポイントガードとして日本の男女通じて初のメダルとなる銀メダルを引き寄せる立役者となった。だが、その後はけがなどで代表戦から遠ざかっていた。

 それだけに、五輪メンバー発表前の最後のアピールの機会となった札幌での2連戦では緊張感も漂わせていた。「選考は気負ってもいいことはない。自分のやるべきことにフォーカスしたい」

 ただ、華やかなプレーは健在だった。初戦はパスや連携のズレがやや見られたが、前半終了間際に3点ラインからさらに離れた位置から放つ「ディープスリー」を決めてブザービーターとし、場内を沸かせる。2戦目はプレーの質を修正した上で、速攻を演出したり、ドライブで相手を引きつけて味方のシュートを引き出したりと「らしさ」を随所で見せた。

 「チームの戦術を駆使しながら、周りの選手の動きを思い描いて連係プレーができる。一緒にプレーしている選手は心地よくプレーできているだろう」と恩塚亨ヘッドコーチ。広い視野と高いパス技術でチームの得点を生む町田選手への賛辞だった。

【日本-オーストラリア】オーストラリアに勝利し、試合後に札幌山の手高時代の恩師である上島正光さん(中央)と話をして笑顔を見せる町田瑠唯=北海きたえーるで2024年6月20日、貝塚太一撮影
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 旭川市出身の町田選手は札幌山の手高から飛躍。東京五輪後は本場・米国でのプレーも果たした。代表発表を前に「東京五輪が終わってからいろいろなことがあった。代表活動を頑張りたい時期に自分でそのチャンスすら失ってしまっていた」としつつ、気持ちを新たにしていた。

 「代表として出場する責任を強く、重く感じていて、全員がそういう気持ちでやっている分、私も頑張ろうとなる。素晴らしい選手たちの持ち味や武器をどう引き出すかを常に考えながらプレーしている」。それを体現したのが高校時代を過ごした札幌での2連戦だった。

 町田選手は「札幌で試合ができて、最高の雰囲気を作ってくれた。こういう機会をいただけてうれしかった」と満面の笑みで感謝しつつ、先を見据えた。「試合は良いところもあったとは思うが、判断ミスが目立っていたし、ゲームコントロールしきれなかった部分もある。これからやっていく必要がある」。思い出の地で輝きを示し、五輪代表へと返り咲いたスターに注目だ。【谷口拓未】

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