貫く強気のスタイル
どんなピンチでもストライクゾーンを中心に投げ込んで勝負する攻めのピッチング。
バッターを抑えたあとは、グラブをたたきながら雄たけびをあげる強気の姿勢を貫くのが古田島成龍(こたじま・せいりゅう)投手です。
こうしたスタイルにたどりついたきっかけは、社会人野球時代にありました。
弱さを受け入れて向き合う
強豪・日本通運に所属していた古田島投手は、おととし、「都市対抗野球大会」に出場。
トーナメント形式での大舞台にルーキーの中継ぎとして東京ドームのマウンドに立ちましたが、大歓声の中で会社を背負って投げる重圧などからコントロールがまったく定まりませんでした。
ヒットとフォアボールで満塁のピンチを招き、さらにフォアボール。
押し出しとなって1イニングもたずに降板し、まったく力を発揮できずチームも敗れました。
精神的な強さの必要性を身にしみて感じた古田島投手は、専門家の指導を仰いでメンタルトレーニングを始めました。
そこで冷静さを取り戻すためのイメージトレーニングや心を落ち着かせるための呼吸法などに取り組み続けました。
みずからの心の弱さを認め受け入れてじっくりと向き合った結果、よくとし(2023年)にはピンチのマウンドで精神的に追い込まれても気持ちをコントロールし、状況や環境に左右されずに落ち着いて投げられるようになったといいます。
その後の社会人野球での活躍を経てオリックスに入団。
ことし2月には初めてのプロのキャンプで周りの選手の技術の高さを目の当たりにして「自分は弱い。プロの世界には、すごい選手ばかりいる」と力のなさを痛感し、メンタルトレーナーのアドバイスを受けながら自分の心を見つめました。
自信を深めた試合 “毎日が都市対抗”
そんな古田島投手がプロで自信を深めるきっかけとなった試合があります。
初登板から5試合目、4月20日に行われたソフトバンク戦。
同点の延長11回ウラ、失点すればチームは敗れるという緊迫した場面でマウンドを託されました。
プレッシャーはプロに入って一番の大きさでした。
ブルペンで登板に備えていた時、チーム最年長のベテランから声をかけられました。
同じ社会人野球出身で41歳の比嘉幹貴投手でした。
『毎日が都市対抗だよ!』
この言葉は、負けたら終わりの都市対抗野球で苦い経験をした古田島投手の心にスッと入りました。
「社会人野球時代の1試合、1試合にかける思いや必死さを思い出した。都市対抗並みの“1発勝負”という気持ちで投げよう」と誓ったのです。
2アウト満塁のピンチを招きましたが、最後は牧原大成選手をセカンドフライに打ち取り無失点で切り抜けました。
“毎試合が1発勝負”の心構えでマウンドに立つようになった古田島投手は、特にランナーがいるピンチの場面で強さを発揮し無失点を続けました。
6月23日の西武戦も0点に抑え、初登板からの連続無失点を22試合に伸ばしプロ野球記録に並びました。
その4日後(6月27日)、新記録をかけてソフトバンク戦に臨みましたがプロ初失点。
記録は止まりました。
古田島投手
「相手はプロで活躍するすごいバッター。一方、自分はプロに入ったばかり。怖いもの知らずで気持ちで向かっていくピッチングを期待されてマウンドに立たせてもらっている。失うものは何もない。これまでのピッチングを自信にして、また無失点で抑えられるピッチャーになりたい」
自分の弱さを認めて地道に向き合い続けた心の強いルーキーが成し遂げたプロ野球タイ記録でした。
(大阪放送局 山内司)
※6月24日 ほっと関西などで放送
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