地域の飲食店、電器屋などあらゆる場所に「黒潮打線」のポスターが貼られている。高校野球ファンに古くから親しまれてきた渥美半島の福江高校(愛知県田原市)を応援するポスターだ。
「黒潮打線」と呼ばれ出したのは40年以上前。野球部出身者によると「波のように押し寄せる打線」との意味という。
ポスターには黒潮打線の言葉と部員の名、集合写真が載っている。ポスターは1999年ごろ、野球部出身者の手で「町を盛り上げながら福江高校を盛り上げたい」と作られ、今なお制作されている。
卒業生の支援は多岐にわたる。野球部グラウンドに土を入れたり、室内練習場を作ったり。同校野球部で活躍した髙瀬伸一郎さん(65)の出身保育園と小中学校は統廃合で姿を消した。地元に残る「最後のとりで」は福江高だけ。同じ思いを持つ人は地元に多く、応援に熱が入る。
例年、数十人規模で福江の応援に地域の人たちが駆けつける。冬場、部員が高校から伊良湖岬まで走り込むと、畑から声が飛ぶ。「頑張って!」
人口減少が進む中、野球をするために半島外から下宿する部員も多い。
下宿生活は経済的な負担が大きい。それに学校のトレーニング器具は数に限りがあり、付近のジムもお金がかかる。昨冬、加藤寛士監督(39)が考えたのが農業のアルバイト。地域に貢献したい、との思いもあった。
6人の部員は昨年12月~2月、働き手が不足していたJA愛知みなみの渥美集荷センターで週に1度働いた。機械では詰められないトマトを手で箱に詰める。部員たちはバイトを通じて地域の産業を新たに知り、地域への思いを深めた。その一人、石川健晴さん(2年)は夏に向けて決意した。
「福江の看板を背負っている。若い僕らが頑張りたい」
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