控えの3年生に晴れ舞台を――。そんな思いを込めた壮行試合が9日、福岡県春日市の春日高校で企画され、同校と東筑が対戦した。29日開幕の第106回全国高校野球選手権福岡大会で、控えにまわる3年生中心のメンバーが出場。この日は応援にまわったレギュラーや下級生、保護者らが見守る中、懸命の全力プレーを披露した。(石垣明真)
「ホームラン!相島!」。五回表、春日の相島海翔選手(3年)が打席に立つと、ベンチから大きな声援が送られた。相島選手が内角高めの直球を振り抜くと、左前安打に。「よっしゃー!」。仲間から歓声と拍手がわいた。
昨秋と今春の公式戦ではベンチ外。「みんなから頼まれて」チームの応援団長となり、グラウンドで戦う仲間の背中を大きな声で押してきた。主将の樋渡力紀選手(3年)は「打席で応援団のものすごい声が聞こえ、力になる。その先頭に立つ姿を尊敬している」。
この日、相島選手は5番中堅で先発出場。試合中、様々な記憶が思い浮かんできた。タイヤを押したり引いたりする冬のトレーニングのつらさ。試合で結果を出せず、悔しくて続けた素振り。そのフォームを撮影したり、「今日の試合はどうだった?」と励ましてくれたりする父の姿。支えてくれた周囲への感謝と重ねた努力をかみしめながら、全力でグラウンドを駆け抜けた。
試合は敗れたが、「自分なりの結果は出せて、満足です」と相島選手。ベンチ入りメンバーは近く発表されるが、外れるかもしれない。その時は「志願して」応援団長になるつもりだ。チームは今春の県大会で初優勝し波に乗る。初めての甲子園出場に向け、自分にできることでチームを支える、と誓っている。
控えの3年生のための試合は各地で開催され、福岡県内では福岡工、筑陽学園、香椎など県内の約10校で試合を行う「俺たちの3年間」もその一つ。今年で3年目の試みで、16日に福岡大大濠と沖学園の試合が予定されている。
9日の壮行試合とは別に、「俺たち」の運営にも携わる春日の八塚昌章監督は、「これまで頑張ってきた3年生が輝ける舞台を作るとともに、最後の夏に向けて、各チームが結束するきっかけにもしてほしい」と話す。
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