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◇◇取材こぼれ話◇◇
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《基礎情報》坂井隆一郎 選手
持ち味はスタートダッシュ
両腕をレーンいっぱいに広げた低い姿勢から一気にリードを奪う。
坂井選手の持ち味は、世界トップレベルのスタートダッシュです。
ピッチが速く、低い姿勢を保てるため、空気抵抗を少なくすることができます。
2023年の日本選手権では一気に抜け出して初優勝。
世界選手権にも2年連続で出場し、予選では中盤までリードするなどスタートが「世界で勝負できる武器」だと手応えをつかみました。
さらなる成長へ坂井選手は、自身の強みにさらに磨きをかけることを決意しました。
坂井隆一郎 選手
「世界の選手と比べると、スタートでリードを取らないと戦えないと実感しました。スタートをしっかり伸ばしていくことが自分が9秒台に近づく方法なのかなと感じています」
カギは“極限までむだを省く”
大学生の時から指導を受けている吉田浩之コーチからは、スタートの一歩目から、極限までむだを省くことがポイントだと指摘されました。
一歩目から効率よく踏み出すことができれば、レース後半でも勢いを持続することにつながるといいます。
吉田浩之コーチ
「脚が最短で動かず、遠回りして、ピッチが遅くなっていました。むだな体力も使うし、スピーディーさもないので、去年は10メートルを通過したときの勢いが全くなくて、60、70メートルで早めの失速につながってしまいました。一歩目から始まる勢いの連続で100メートルを走ることが必要で、そういうところも細かく意識してやっています」
原点を見直す
坂井選手はこの冬、練習に専念するため、海外でのレースにはあえて出場せず、ふだんは群馬大で教授を務める吉田コーチと一緒に練習する回数を倍以上に増やました。
脚を無駄なく、運ぶために取り組んでいるのが、吉田コーチが考えた基礎練習です。
ハードルで体を支えて、上下に動かしたり、ひざを高く上げたり。
素早く動かしてもできているか、走ったときにも理想の動きが連続できているか繰り返し確かめてきました。
こうした地道な練習を30種類以上、多い日で1日およそ4時間かけて行い、体に覚え込ませてきたのです。
坂井隆一郎 選手
「原点に返って自分の武器を見直すことが本当に大切なことなんだと思うことができました」
スタートに手応え
5月から出場したレースではみずからの成長を実感しています。
地元・大阪での初戦は勢いそのままに優勝。
さらに国内外のトップ選手が出場した国際大会では、世界選手権で2年連続で入賞を果たしているサニブラウン アブデル・ハキーム選手に肉薄する10秒10の好タイムをマークしました。
坂井隆一郎 選手
「取り組んできたことが出せて形になってきています。試合を重ねるごとにもっともっと鋭く飛び出せると思います」
“9秒台”と“五輪決勝”にこだわる
坂井選手が繰り返し話してきた目標が「9秒台」と「オリンピックの決勝」です。
これまで日本選手で「9秒台」を出したのは4人、「オリンピックの決勝」に進んだのは92年前の吉岡隆徳さんただ1人。
両方を成し遂げた選手はいません。
磨いてきたスタートで、その歴史の扉をこじあける覚悟です。
坂井隆一郎 選手
「高い目標を持つことで自分のモチベーションにもなりますし、オリンピックに出場するというだけでは、もの足りないというか、まだまだいきたいという思いがあります。自信はありますし、パワーアップしたスタートに注目していただけたらいいなと思います」
◇◇取材こぼれ話◇◇
坂井選手が取り組んでいるドリルを私たち(記者とアナウンサー)も体験させてもらいました。
ハードルで体を支えて、足を上下に動かす、一見、地道な動きですが、これが実は相当ハードなんです。
わずか数十秒行っただけですが、翌日は太ももの付け根にある「腸腰筋」が激しい筋肉痛に襲われ、階段を上がるのもきついほどでした。
坂井選手のスピードを支えている強さをかいま見た瞬間でした。
(2024年5月31日「おはよう日本」で放送)
《基礎情報》坂井隆一郎 選手
▽生年月日:1998年3月14日
▽出身:大阪府
▽主な実績:
・2023年 日本選手権 初優勝
・2022年 世界選手権 準決勝敗退
・自己ベスト 10秒02(2022年6月)
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