上川陽子外相

 上川陽子外相は16日の閣議で、2024年版外交青書を報告した。日韓関係について、23年は岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が首脳会談を7回実施するなど「日韓関係が大きく動いた1年」と指摘。韓国を「国際社会における様々な課題への対応にパートナーとして協力していくべき重要な隣国」と位置づけた。

 韓国に対して「パートナー」という言葉を用いたのは10年版以来、14年ぶり。その上で「両国は、地域の平和と安定という共通利益の確保に向けて、多様な分野で連携を深め、協力の幅を広げていく必要がある」と強調した。

 中国については「尖閣諸島情勢を含む東シナ海や南シナ海における一方的な現状変更の取り組みや、ロシアとの連携を含む日本周辺での軍事的活動の活発化など、数多くの課題や懸念が存在している」と述べた。

 一方で、23年11月の日中首脳会談では「戦略的互恵関係」が改めて確認された。このことを踏まえ、19年版以来5年ぶりに「戦略的互恵関係」という言葉を復活させて、「(両国の関係を)包括的に推進する」と明記。対話を重ねながら、共通の課題については協力する「建設的かつ安定的な日中関係の構築を双方の努力で進めていくことが重要だ」との認識を示した。

 ロシアによるウクライナ侵攻や、23年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃で緊迫する中東情勢にも言及。「サイバー攻撃や偽情報拡散など新たな脅威を顕在化させ、日本を含む世界各地域の安定と繁栄に影響をもたらす問題となっている」と指摘した。24年は米大統領選など各国で重要選挙が相次ぎ、「国際情勢は重大な局面を迎える」としている。

 国際社会が「歴史的な転換点にある」との認識も表明。日本外交の基本方針として、国益を守る▽日本の存在感を高めていく▽国民の声に耳を傾け、理解・支持される外交を展開する――の3点を挙げて、国際社会の課題解決を主導していく姿勢を示した。【森口沙織】

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