東京・霞が関の官庁街。奥右は国会議事堂、奥左は首相官邸

人事院は28日、2024年度春に実施した国家公務員総合職試験の合格者を発表した。合格者数は1953人だった。大学別にみると東大出身は189人で、12年度に現在の試験制度となって以降、過去最少となった。

総合職試験の倍率は7.0倍で、23年度春の7.1倍に比べて低下し最低となった。女性の合格者は652人で合格者全体の33.4%を占め、過去2番目に多かった。

出身大別では京大(120人)、立命館大(84人)、東北大(73人)が続いた。東大出身者は15年度の春試験では合格者の26%を占めていた。24年度は9%に下がった。

14年度春の試験に合格した東大出身者は438人で、10年で半分ほどに減った。背景には東大生の意識の変化がある。

東大の公表によると、22年度の学部卒業生3094人のうち公務員を進路として選んだのは116人だった。14年度は3129人のうち170人が公務員を選んだ。

東京大学新聞社によると、23年3月に東大を卒業・修了した学生の就職先で最も多かったのは楽天グループの17人だった。大学院修了生だとコンサルティング大手のアクセンチュアの41人となった。

24年度春の総合職試験は申し込み受け付けを1か月近く早め、初めて5月中に合格者を発表した。試験に合格した人は6月12日から「官庁訪問」と呼ばれる各省庁の面接に臨み、24日から内々定が出始め、25年春に正式採用となる。

民間企業の採用活動が早期化するのをにらみ、日程を前倒しして優秀な人材を確保する狙いがある。

合格者数は前年度と比べて3.7%の減少にとどまった。中央省庁の人事担当者は「試験に合格して省庁から内定を得ても民間企業とてんびんにかけて辞退する学生が一定数いるため、多めに内定を出す年度もある」と明かす。

一方で、国家公務員の担い手不足は進む。24年度春の国家公務員総合職試験への申込者数は1万3599人で過去最少となり、およそ10年間で4割減った。

国家公務員の働く環境は良好とはいいがたい。国会答弁の作成作業などで残業が多く、給料も大手企業に比べて見劣りするとされる。

人事院は21年度に就職活動を終えた学生を対象に国家公務員を選ばなかった理由を調査した。76%が「採用試験の勉強や準備が大変」をあげた。55%の人が「超過勤務や深夜・早朝に及ぶ勤務が多そう」と回答した。

人事院は若年層に訴えかける施策を拡大している。23年度の勧告は初任給の大幅上昇を盛り込んだ。在宅勤務手当の導入や「選択的週休3日制」の対象拡大といった職場環境の改善も要求した。

国家公務員の人事制度を協議する人事院の「人事行政諮問会議」は職務内容で報酬を定める「ジョブ型」を拡大する案を中間報告で提起した。外部人材の登用や若手の離職防止という狙いがある。

内閣人事局の調査によると、22年度の国家公務員の採用全体に占める中途採用の割合は17%だった。申込者数の減少が止まらない現状で「即戦力」となる中途採用人材の拡大がカギとなる。

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