政府は20日、自衛官の処遇改善に向けた関係閣僚会議を開き、基本方針をまとめた。2028年度に俸給表を改定することや、若い自衛官には採用後、6年間で計120万円の給付金を支給することなどを盛り込んだ。多くが56歳で定年退職する自衛官の定年延長も検討する。定員割れが続く自衛官の確保に向けて、てこ入れを図る。
基本方針は「戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、防衛力の抜本的強化を真に実現するためには、優れた自衛官を安定的に確保する必要がある」と強調。そのうえで、処遇改善▽生活・勤務環境の改善▽新たな生涯設計の確立――などを進めていくことを決めた。
処遇改善策として、主要な野外演習に従事する隊員への手当など八つを新設。既存の25の手当についても金額を引き上げたり、対象範囲を広げたりする。
18~33歳未満が対象となる自衛官候補生の23年度の採用率が30%にとどまるなど、防衛省・自衛隊は人材確保に苦慮している。少子化の進行に加え、自衛隊の集団生活が若い世代に敬遠されていることも一因となっている。
若い隊員をつなぎ留めるため、駐屯地内で生活する隊員らを対象に、「指定場所生活調整金」(仮称)を採用から6年間、毎年20万円給付する。隊舎の個室化や建て替えも進める。駐屯地や基地での無線LAN環境を拡充し、27年度までに主要艦艇でもインターネットを閲覧できるようにする。
「老後の生活」への支援を視野に入れた対応も実施する。26年度をめどに再就職先の賃金に加えて支給される「若年定年退職者給付金」の水準を引き上げる。28年度以降、56歳が多い定年を2歳程度延長することも検討。宇宙やサイバー、医療など体力的な依存度の低い分野で働く自衛官には「60歳定年」を導入することも視野に入れる。円滑な再就職に向けて職業訓練も充実させる。
防衛省は基本方針でまとめた施策の実現に向けて、近く新たな部署を省内に設置する。【中村紬葵】
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