日本学術会議のあり方を議論する政府の有識者懇談会は18日、同会議の法人化に向けた論点をまとめた報告書を公表した。首相による会員任命をなくして海外のアカデミー(学術機関)のように政府は会員選考に関わらず、投票プロセスを導入するよう提言した。
同会議は一部の項目に反対しているものの、首相による会員の任命拒否に端を発した改革はひとつの節目を迎える。
報告書は学術会議の活動や運営について、透明性を高くして国民に見えやすくするべきだと唱えた。学術会議が中期的な活動方針をつくり「評価委員会」や「監事」といったチェック機能を配してガバナンスの担保に取り組むとの方針を明記した。
学術会議の見直しは2020年に菅義偉首相(当時)が会議側の推薦候補6人の任命を拒否したことが議論のきっかけだ。
現在の会員選考は現役会員が推薦する「コ・オプテーション方式」を採用する。報告書は同方式と投票を組み合わせることで客観性や透明性などを保つべきだとした。選考方針や手続きを助言する「選考助言委員会」を設けることも提案した。
会員数は現行の210人から250人に増やす。諸外国のアカデミーと比べて少なく、多様性を図る観点から増やす。会員任期は6年として1回のみ延長を可能とし、定年は現在の70歳から75歳にする。
政府は人件費など年間10億円ほどを国の予算に計上しており、新法人になっても国費で財政支援する。報告書案は学術会議が自分たちでも多様な手段で財源確保に努めるよう求めた。
学術会議の法人化には法整備が必要となる。政府は有識者懇談会の報告書を基に詳細を詰め、25年の通常国会にも関連法案を提出する。日本学術会議法の改正や新法を念頭に置く。
学術会議は7月の懇談会に懸念点をまとめた資料を提出した。監事や評価委員会の設置などを法定化することに反対した。依然として「監事」を首相が任命することに反対するが、政府は国民の納得を得るためには必要との立場をとる。
懇談会の岸輝雄座長(東大名誉教授)は18日の会合後、記者団に「政府と学術会議が協力してより良いアカデミーをつくってほしい」と述べた。「監事」で折り合えなかったことについては「もう一段の話し合いで進展することも期待できる」との認識を示した。
懇談会は23年8月から議論を始めた。24年4月から会員選考や組織・制度について2つの作業部会をつくって話し合ってきた。
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