林芳正官房長官

 政府は、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」(ACD)の法整備を検討する有識者会議の初会合を5月中にも開催する調整に入った。政府関係者が7日、明らかにした。ACDは憲法が保障する「通信の秘密」などとの整合性が課題となっており、政府は有識者会議での議論を通じて法的課題を丁寧に整理したい考えだ。早ければ秋の臨時国会への関連法案提出を視野に入れる。

 林芳正官房長官は7日の記者会見で「我が国のサイバー対応能力を向上させることは急を要する重要な課題だ」とし、有識者会議について「できるだけ早期に開催できるように努力したい」と述べた。

 ウイルスなどを用いたサイバー攻撃は政府機関や企業から機密情報を流出させるだけでなく、電力、通信、医療システムといった重要インフラに障害をもたらすことも可能で、安全保障上の脅威と認識されている。このため政府は2022年末改定の国家安全保障戦略に、重大なサイバー攻撃を未然に排除し被害の拡大を防止するため「ACDを導入する」と明記した。

 具体的なACDの手段として、攻撃側サーバーに侵入して無害化を図ることなどが想定されるが、憲法21条や電気通信事業法が定める「通信の秘密」や、不正アクセス禁止法などとの整合性が課題となる。政府は有識者会議での議論を通じてこれらの課題を整理したうえで、与党との調整に入りたい考えだ。

 政府は当初、有識者会議を23年秋に設置して論点をまとめたうえで、今国会への関連法案提出を目指していた。防衛装備移転三原則の見直しに関する与党協議が長引いた影響で、会議の設置を先延ばししてきたが、三原則見直しを巡る与党協議は23年末に「運用指針」改定という節目を迎え、4月には自民党の「サイバーセキュリティーに関するプロジェクトチーム」が「サイバー空間は今や『常時有事』だ」として関連法案の早期国会提出を求める提言を発表。政府に早期対応を求める声が強まっていた。【池田直】

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