公職選挙法に抵触しているという指摘が相次いでいる兵庫県の斎藤元彦知事。

代理人弁護士は、請求書などの書類を示して、「法令違反はなかった」と強調しています。

また、公選法で『選挙が行われる自治体と特別の利益を伴う契約の当事者は、選挙に関して寄付をしてはならない』と定められている中で、代理人弁護士は『PR会社社長は、兵庫県の委員ではあるが委任契約で“請負契約”ではない。報酬も3年で15万円。特別な利益と評価できないと考えている」と説明しました。

こうした斎藤知事の代理人の説明について、公選法に詳しい専門家は「公選法で寄付が禁止されている目的からすると、代理人はもっと詳細な説明をする必要がある」との見解を示しています。

■PR会社代表「広報全般を請け負った」とコラム公開

兵庫県内のPR会社の代表が知事選挙で斎藤知事の「広報全般を請け負った」とネット上のコラムに公開した問題。

総務省は、業者が報酬を受け主体的に選挙活動に関わることは「公職選挙法に抵触する可能性がある」としていますが、コラムには、知事と打ち合わせする様子や、選挙カーに乗り込みライブ配信を行う姿も掲載されていました。

■「選挙運動の中核にいた認識は全くない、あくまでボランティア」と斎藤知事側

斎藤知事側はPR会社にチラシのデザイン代などとして約70万円を支払ったことを認める一方で、「選挙運動の中核にいた認識は全くない、あくまでボランティア」だとしています。

斎藤知事は27日の会見でこのコラムについて「事前に一切見ていないし、発信することも聞いていない」と述べました。

Q.PR会社の社長が選挙戦を振り返る発信をネット上でされたが事前に社長から発信してもいいかと打診はあった?

【斎藤元彦知事】「一つ言えるのは事前に私は一切見てもいませんし、そういった発信をするとも聞いてないし、内容自体も一切確認していない、発信された後に知ったということです」

■「PR会社の方がSNSで文書を作られたことは事前には聞いていなかった。そういう意味でも若干の戸惑いがある」と知事

Q.ボランティアで協力していただいていたということだが写真を見ると会社の事務所で業務として請け負っているように見えるが明確に違う?

「お願いしたのはポスター制作を含めた70万円の対価支払いに伴う業務だけ、それ以外は個人でボランティアとして対応していただいたと」

Q.言葉を選ばずいえば“迷惑”、いろんな影響受けているかと思うが、今現在PR会社側に対して、どんなお気持ちでいるのか?

「我々としては、選挙戦は適法にやってきたという認識、当会社の方がSNSで文書を作られたことは事前には聞いていなかったので、そういう意味でも若干の戸惑いはありますね」

Q.今回の件は買収ではなくポスター等の代金としての正当な支払いという認識?

「繰り返しになりますが公職選挙法等法令に抵触するような行為はしていないというのが私の認識、事実関係、法令への対応は代理人の弁護士に…」

斎藤知事は「事実関係の説明は代理人の弁護士に任せている」と繰り返しました。

■「広報全般を任されたという事実はない」と斎藤知事代理人

同日行われた代理人弁護士の会見。

斎藤知事の代理人は「広報全般を任されたという事実はない」とコラムの内容を否定しました。

【奥見司弁護士】「(PR会社の)社長がnoteに記載されているようなSNS戦略を依頼した、広報全般を任せたということは事実ではありません」

PR会社の代表は、SNS戦略含め、広報全般を任せられていたと自身のコラムで明かしていました、斎藤知事の代理人弁護士はこれを最初に否定しました。

【奥見司弁護士】「個別に依頼をしましたので契約書という書面は作成しておりません」「注文は10月3日から9日ごろにかけて個別で依頼しています」

「個別というのは『チラシデザインの制作をお願いします』『わかりました』そういうような関係です」

「PR会社側からの請求は発行日が10月31日のものであり、一通のみです。内容確認後、支払いをしたのが11月4日です」

その上で、PR会社の代表による選挙での活動は、ボランティアだったと説明しました。

■PR会社代表の選挙での活動は「ボランティア」従業員は演説会場にいたが「選挙運動に関わっていない」と斎藤知事側

【奥見司弁護士】「社長ご夫妻は、斎藤氏がPR会社を訪れた日以降、斎藤氏の考えに賛同してくださり、斎藤氏の応援活動をしてくださっています」

「社長の活動としてこれまでに確認できているのは、公式応援アカウントの取得、公式応援アカウントへの記載事項のチェック、街頭演説会場などにおける動画の撮影、アップロードなどです」

「これらは社長、社長の夫、斎藤氏の同級生、そのほか選挙スタッフといえるメンバーと話し合って行われております」

「これらはいずれもPR会社としての活動ではなく、選挙のボランティアの一員としてなされたものです。かつ社長が主体的・裁量的に行ったものでもありません」

「無論、社長個人とは何の契約もありませんので、報酬支払いの事実もその約束もありません」

PR会社の従業員は、演説会場にいたことは確認しているものの、選挙運動には関わっていないということです。

活動はあくまでも会社ではなく、個人で行ったものとしていずれの行為も公職選挙法には抵触しない考えを説明しました。

■PR会社代表のコラム「盛っていると認識」と知事代理人

Q.PR会社のコラム、これは嘘、あるいは盛っている?

【奥見司弁護士】「事実である部分と事実で全くない部分が記載されております」

「特に広報全般を任せたとか、そういう部分については全く事実ではないと考えているので、盛っているか、盛っていないかについては、盛っておられると認識しています」

Q.このPR会社によって、色々書かれたことによって、迷惑を被ったと思うが、そのことをどう思うか?今後この会社を、迷惑を受けたことによって訴えることはあるのか?

「先週末この問題確認しまして場合によっては、今後の展開によれば名誉毀損等の問題はあるのかもしれませんけども、現時点では斎藤知事の行為が法に抵触していないことを説明することに徹すると考えており、その先のことは考えておりません」

■「知事代理人の会見でもまだ明らかになっていない部分が多い」と専門家

代理人弁護士の記者会見での説明について、公職選挙法に詳しい弁護士法人ユア・エース 正木絢生代表弁護士は「公選法では、寄付の禁止される当事者を『請負契約』に限定していない。代理人の説明は筋が通っているようにも思えるが、寄付が禁止されている目的からすると、もっと詳細な説明をする必要がある」との見解を示しています。

Q.会見全体を通して『公選法に違反していない。買収にあたらない』という説明、どう受け止められましたか?

【正木弁護士】「代理人弁護士は、斎藤氏側の立場ですから、むしろ公選法違反等を認める主張をする方が考え難く、この主張は当然なものだと思います」

「今回の会見でもまだ明らかになっていない部分が多く、代理人弁護士としても全ての事情を把握できるというわけではないでしょうから、今後調査等が進むことを期待します」

■「公選法で寄付が禁止されている目的からすると、もっと詳細な説明が必要」と専門家

Q.公選法199条には『選挙が行われる自治体と特別の利益を伴う契約の当事者は、選挙に関して寄付をしてはならない』定められている。

これに対し代理人弁護士は『PR会社社長は、兵庫県の委員ではあるが委任契約で「請負契約」ではない。報酬も3年で15万円。特別な利益と評価できないと考えている』と説明した。説明は筋が通っていると評価できるものですか?

【正木弁護士】「公選法において寄付が禁止されるのは、寄付が買収や供応などの温床になりがちで、寄付の多少によって選挙の結果が左右されることを防ぎ、選挙の公正を保つことに目的があります」

「そのため、公選法199条1項は、寄付の禁止される当事者を『請負契約』に限定していません。代理人弁護士の説明は、一応の筋が通っているように思いますが、寄附が禁止されている上記の目的からすると、もっと詳細な説明が必要なのではないかと思います」

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