岸田文雄首相

 岸田文雄首相は2日、訪問先のパリで開かれた経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会で、基調演説を行った。首相は今年の日本の賃上げが「約30年ぶりの高水準」になったと成果を強調し、「日本の『稼ぐ力』を復活させる必要がある」とさらなる経済政策の取り組みに意欲を示した。中国を念頭に置いた経済的威圧への対応や重要物資のサプライチェーン(供給網)強化に向けて、日本を含む友好国が協力していく必要性も訴えた。

 今年は日本のOECD加盟60周年の節目にあたり、日本が10年ぶりに議長国を務めた。

 首相は理事会冒頭に約10分間演説。「日本はコストカット型から成長型経済への移行を目指している」と紹介し、「力強い賃上げや史上最高水準の設備投資は強い追い風であり、これを一層加速させる」との姿勢を示した。

 国際情勢については、インフレやエネルギー・食料の供給途絶、サプライチェーン分断のリスクなどを挙げ、「世界を再び安定成長の軌道に乗せるための岐路にある」と危機感を強調。中国が貿易関係を通じて他国に圧力をかけたり、補助金を通じて自国企業を過度に優遇したりしていることを念頭に、「経済的強じん性と経済安全保障を確保するための協力の強化が必要だ」と呼びかけた。

 一方、ルールに基づく自由で公正な経済秩序を共有するOECDの知見を、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国に拡大させることが重要だとの認識も示した。「各地域との連携強化はOECDが進むべき未来だ」と訴え、「日本がOECDとアジア地域の懸け橋となる」と述べた。アルゼンチン、インドネシア、タイがOECD加盟を目指していることを歓迎し、アフリカからの加盟にも期待を寄せた。【パリ村尾哲】

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