衆院本会議に臨む石破首相(9日、首相官邸)

衆院は9日午後の本会議で3年ぶりに解散された。与野党は15日公示―27日投開票の衆院選に向けて事実上の選挙戦に入った。与党は1日に発足した石破茂政権の信任を問う。賃上げの定着など経済政策の具体策や安全保障政策、政治とカネの問題への対応などが争点となる。

政府は午前9時ごろの臨時閣議で衆院解散を決めた。午後4時から開会した衆院本会議で額賀福志郎議長が解散詔書を読み上げた。参院も同時に閉会し9日が会期末だった第214回臨時国会は閉じた。

首相は就任から解散まで戦後最短の8日後に解散に踏み切った。想定できる日程で最も早い解散で、国会での予算委員会を開かずに野党からの追及を避けた。

立憲民主や日本維新の会、共産、国民民主の野党4党は9日、衆院に内閣不信任決議案を提出した。立民の野田佳彦代表は「党利党略を優先させたと判断せざるをえない」と批判した。衆院解散で午後3時半から予定していた衆院本会議は午後4時からにずれ込んだ。

政府は同日夕に改めて臨時閣議を開き15日公示―27日投開票の衆院選日程を正式に決めた。衆院解散をふまえて首相は午後7時30分ごろに首相官邸で記者会見する。

首相は4日の閣議で経済対策をまとめるよう指示した。低所得者向けの給付金や地域の実情に応じた地方交付金などを盛り込む方針を示した。所信表明演説では「地方こそ成長の主役」だと掲げ、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増する目標を据えた。

立民は「分厚い中間層の復活」などを主要政策とする公約を発表した。中低所得者の消費税負担の一部を税額控除と給付で軽減する「給付付き税額控除」の導入を提示した。

9日午後に首相が臨んだ初めての党首討論では、政治とカネへの対応や能登半島地震・豪雨の支援、賃上げの定着といった主要論点に議論が集中した。石破政権の衆院選の結果を示す試金石になる。

立民の野田氏は自民党派閥の政治資金問題をふまえ「うやむやにして早く解散をする、裏金隠し解散ではないか」とただした。臨時国会を延長して予算委員会を開くよう要求した。首相は予算委員会を開くか否かは国会が決めることだと反論した。

野田氏から政治資金規正法の見直しを問われた首相は「お金に左右されない政治をつくることは重要だ。透明性がきちんと担保されるよう努力する」と答えた。

自民党は9日、政治資金収支報告書の不記載があった議員のうち12人を衆院選で公認しないと発表した。野田氏は「非公認で立候補した場合、当選したら追加公認するのか」と追及した。首相は「主権者である国民の判断があれば、追加公認することはある」と言及した。

能登半島地震や豪雨災害への対応を巡って野田氏は会期を延長して補正予算を編成すべきだと提示した。首相は「補正予算を組むまで2カ月かかる。予算編成の指示はした」と話した。衆院選後に補正予算案を審議し、早期成立をめざす考えを示した。「切れ目のない予算審議が国民生活のためだ」と主張した。

維新の馬場伸幸代表は2025年の参院選で不記載議員に関して、今回の衆院選と同じ基準で自民党として公認するかを決めるのかと質問した。首相は「同じ国会議員なので衆院と参院で違う対応をすることはない」と述べた。

首相が所信表明演説で示した物価上昇を上回る賃上げの定着や最低賃金の底上げも論点になった。首相は「中小企業が従業員に十分な賃金が払えるように生産性を上げて原資を生み出せるよう努力したい。物価上昇を上回る賃金上昇の実現もこれから議論したい」と提起した。

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