鹿児島県警の不祥事を巡る県議会の百条委員会について、11日、自民党は議会運営委員会で設置を見送ると説明しました。最大会派の自民党が設置に反対したことで、9月議会では設置されない公算が大きくなった百条委員会。政治学の専門家は「百条委員会でしかできないことがある」と指摘します。

11日午前に開かれた県議会の議会運営委員会。自民党県議団から百条委員会の設置を見送る理由などについて説明がありました。

自民党県議団・西高悟会長
「総務警察委員会で引き続き審査を行うが裁判の状況などを注視し状況しだいではは百条委の設置を検討するということで、今回は、見送る」

2024年度に入り、現職警察官や元幹部、あわせて4人が逮捕されるなど不祥事が相次ぐ県警。強い権限で調査できる「百条委員会」の設置を提案していた県民連合からは、自民党に厳しい指摘が。

県民連合・福司山宣介議員
「県民の不信感はさらに高まっている。批判の声も強まっている。県議会の存在理由が問われているのではないか」

今回、自民党県議団が百条委員会の設置を見送った理由の一つとして挙げるのが、県警の野川明輝本部長が事件を隠ぺいしたと訴えている、前の生活安全部長の裁判が始まっていないことです。

しかし、政治学が専門の鹿児島大学・吉田健一准教授は、議会と司法の役割は違うと指摘します。

鹿児島大学・吉田健一准教授(政治学)
「司法の場と県民の代表である県議会の場は別の役割がある。いつから鹿児島県警はこういう体質になっていたのかということは、百条委員会でしか議論できないと思う」

最大会派の自民党が反対に回ることで9月議会では設置が見送られる公算が大きい百条委員会。

一方、兵庫県議会では今、知事のパワハラ疑惑などについて百条委員会による調査が進んでいます。

鹿児島大学・吉田健一准教授(政治学)
「議会がどちらを向いているかだと思う。有権者の側を向いているのか、知事・警察・行政の側を向いているのか。本来議員は、有権者に選ばれて行政を監督するためにいるわけだから、どちらを向いて政治をやっているかが厳しく問われている」

自民党県議団は全会一致で見送る決断をしたとするものの、裁判とは切り離した形で、百条委員会だからこそ審査できる項目はないかを引き続き探る動きもあるようです。

選挙で選ばれた県民の代表として何ができるのか。吉田准教授は県議会に求められる役割をこう話しました。

鹿児島大学・吉田健一准教授(政治学)
「議員の意識と県民の意識が乖離(かいり)してきている。政党・会派にかかわらず、背景には当選させるために投票した有権者がいるから、そういう人たちの気持ちに寄り添い、議会人としての良識ある対応を求めたい」

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