約3年にわたる延期を経て、8月22日から廃炉の「最難関」への接触が始まる。東京電力・福島第一原発で始まる「燃料デブリの試験的取り出し」が、いまだ全容がつかめない”敵”の手がかりとなり、本格的な取り出しに役立つことになるという。

<取り出した燃料デブリの分析>
茨城県にある、JAEA・日本原子力研究開発機構の大洗研究所。福島第一原発から取り出される「燃料デブリ」はここに運び込まれて、核分裂反応が連鎖的に続く「臨界」を起こす可能性があるかなどの分析が行われる。
日本原子力研究開発機構の前田宏治部長は「塊として持ってきたモノが、どういった化学系であるか、結合状態がどうであるか、そういった細かい性状が理解される」と説明する。

<作業に役立てるための試験的取り出し>
福島第一原子力発電所では、事故で溶け落ちた核燃料いわゆる「燃料デブリ」を事故後初めて敷地の外に持ち出す「試験的取り出し」に、8月22日から着手。2週間ほどかけて3グラム以下を取り出す計画だ。
人が近付けないほどの、極めて高い放射線量を放ち続ける燃料デブリ。日本原子力研究開発機構の前田部長は「取り出しにあたって、どういったものを準備すればしっかり取れるのか。一定の知見を与える事ができるんじゃないか」と話す。
JAEAでは2024年度中に分析を終えて、本格的な取り出し作業を行う際の検討に役立てたいとしている。

<遠い廃炉への道のり>
改めて、大洗研究所に運び込まれる燃料デブリの量は3グラム以下で「1円玉3枚ほど」だという。燃料デブリの総量は、1号機から3号機まで合わせて約880トンとされていて、廃炉への道のりはまだまだ遠いと言えそうだ。
22日の着手を前に、福島第一原発が立地する福島県双葉町の住民からは廃炉に向けた見通しを示すよう求める声が聞かれた。
「ようやく始まったということで、これが第一歩ですよね。あとは本格的にいつ取り出すのか、その工程表を早めに作ってみなさんに流していただければ、みなさんも理解するのかなと思いますね」「(廃炉の)ゴールなんかたぶん見えないと思う、880トンのデブリが残ってるってことは、そこまで取りきれないと思う」と住民は話す。
一方で、8月に入り使用済み燃料プールに繋がるタンクから水漏れが確認されるなど、原発内でのトラブルが相次ぐなか慎重な作業を求める声も。
「まずは安全に作業を進めていただきたいということは、強く思っています」

<廃炉に関する安全監視協議会>
一方、20日は福島県や原発周辺の自治体などが廃炉作業の進捗状況などを確認する協議会も行われた。
協議会では、東京電力に対し「受入施設までの安全な運搬の徹底」や「想定されるトラブルをあらかじめ検討しておくこと」を求めた。

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