自民党の総裁選は候補者として名前の挙がる人も多く混戦模様となっています。総裁選はどのように行われるのか、静岡1区選出の上川陽子 外相の立候補の可能性などについて、テレビ静岡・永井学 特別解説委員が解説します。

自民党総裁選の仕組みは?

-立候補するためには国会議員20人の推薦が必要ですが、この20人というのが最初のポイントですか?

永井学 特別解説委員:
20人は簡単に集まりそうに見えるが、相当大変なことと言われています。派閥が存在した時には、派閥単位で戦うことがほとんどだったので集まりやすかったものの、今回は派閥の解散でさらに難しくなっています。そして、推薦人になるということは候補者と命運を共にすることにもつながるため、そう簡単ではないようです

推薦人20人が集まって立候補を届け出た人で選挙戦を戦うが、日程は8月20日に自民党本部で決まります。

まず投票ですが、国会議員票がひとり1票の367票、全国の党員・党友によるいわゆる地方票の367票、これは得票数に応じて各候補者に配分されます。

合計734票の過半数を獲得した候補が新総裁に決まるが、過半数の候補がいない場合は上位2人の決選投票となります。

決選投票は、国会議員票の367票は変わらりませんが、地方票は各都道府県連に1票ずつで47票です。

-笠井さん、立候補予定者も多く1回目で過半数を獲得するのは難しそうですね?

元フジテレビアナウンサー・笠井信輔さん:
だからこそ11人も出るのかなと。そこで出てくるのが「うちの派閥から2人出ているから票が割れるんだ」とか「あした派閥で話し合う」とか。

いま永井さんから”派閥は解消”という話があったがそれはどういうことなのかと。調べてみれば、正式な派閥を解消する届け出をしているのは旧森山派だけで、麻生派は未だに派閥の解散を拒んでいるし、岸田派をはじめ4つの派閥は未だに総務省に解散届を出していない。ここから調整を図る、つまり誰が決まるかの前に候補者の調整を図るところで派閥の力学が見えてきたら、これは国民は冷めますよ。

自民党は変わるからこそ次の総裁選で戦うんだなということを国民に示そうとしている中で、派閥の動きが見えてきたら良くないですよね

小林氏が「派閥に頼らない」と49歳で立候補を表明して素晴らしいと思うが、他の派閥で調整を図って候補者が狭まっていくことが見えてきたら、それ以外の自由な選挙人集めと総裁選といったものが自民党はできるのかなと。そこは試されていると思いますね

11人が立候補に意欲

立候補者が多くなりそうという話しがありましたが、現時点で立候補に意欲を示しているのがこちらの11人。

この中で、これまでに推薦人20人を確保して立候補を表明したのは小林鷹之 前経済安保相ひとり。

そして、静岡1区選出の上川陽子 外相も立候補に向けて準備を進めています。

-永井さん、上川さんが名乗りをあげましたが、静岡市民・静岡県民の中には期待する人が多いかと思います

永井学 特別解説委員:
静岡県の関係者で自民党の総裁に就いたのは、1956年、今から68年前に石橋湛山が第2代総裁に就任して以来、誰もいないので期待する声は大きいです。

-静岡県の関係者というのは静岡の選挙区から当選されたということ?

永井学 特別解説委員:
そうですね。石橋湛山 氏は静岡出身ではないようでして、静岡県の東部、昔は静岡2区でしたが、そこからの立候補で自民党の国会議員を務めていたということです

静岡出身・上川外相はどんな人?

-上川氏は静岡出身ですよね

永井学 特別解説委員:
純粋な静岡の人ですね

-そういった意味でも静岡市民・静岡県民の期待の声は大きいのかもしれません。そして、推薦人をまず集めなればならないということですが、この点についてはいろいろなアプローチを?

永井学 特別解説委員:
上川外相は当選7回、これまで少子化担当大臣や法務大臣を3回、党の役職も幹事長代理を務めてきて、麻生副総裁が外交手腕を高く評価したことで、一躍ポスト岸田に名前が挙がってきましたが、19日に立候補に向けた準備を進めていると明らかにしており、今後、公務と並行して推薦人確保の作業を行っていくものとみられます。

県内の自民党議員の対応は?

-静岡県内の自民党国会議員にも協力の依頼があったようですね?

永井学 特別解説委員:
ある議員に聞いたところ、8月16日に「総裁選に出たいと思っているので協力してほしい」と電話で依頼があったそうですが、「推薦人になってほしい」とか具体的な支援の内容はなかったとのことです。

上川外相は旧派閥(宏池会)を当てにすることは考えておらず、個人的なつながりを頼りに推薦人確保に向かっているようです。

-岸田首相にも直接会って決意を伝えたということですよね

永井学 特別解説委員:
そうですね。19日朝、自民党県連の井林辰憲 会長にも話を聞くことができ、井林会長は派閥として存在している麻生派の所属だが、「上川外相が立候補すれば支援したい」という意向を示しています

“派閥なき総裁選”となるか?

-麻生派の井林会長がもともと岸田派に所属していた上川氏を本当に支援するのか、派閥なき総裁選となるのか、そのあたりも気になりますよね

笠井信輔さん:
そうですね。そして自民党は刷新を図る意味で女性候補が出てくるということ、総裁に選ばれれば一番刷新だが、過去の総裁選でも出てくる女性候補者の名前というのはメディア的に目立っていたり、スタンドプレーの人だったりとかいろいろな人がいましたが、上川氏はとても堅実。

地味だが着々仕事をしている人で、そういった意味で期待の声は高いと思うが、やはりここに同じ岸田派から林氏が出てくれば推薦人は集められないのではないかという懸念みたいなものもあって。こういったところで上川氏が出てくれば「あ、自民党変わってくるかな」と。候補になるだけでも違ってくるかなと思います。

上川外相の立候補の課題は?

-永井さん、上川外相の立候補の可能性は?

永井学 特別解説委員:
派閥・旧岸田派は考えないということですが、やはり核となるのはこれまでの仲間、旧岸田派だと思いますが、旧岸田派からは林官房長官が名乗りをあげているし、外務大臣という多忙な公務をこなしながらの準備作業となるので、その点は課題だと思います

笠井信輔さん:
どのマスコミも「旧派閥」と言うが、本当に”旧”になっているのかと個人的には思います

自民党総裁選の日程ですが、FNNの取材で9月12日告示、27日に投開票で固まったという情報が入ってきています。

一方、立憲民主党の代表選挙ですが、こちらは9月7日告示、23日に投開票という日程が決まっていて、9月は政界が賑やかになりそうです。

自民党の総裁選はしっかりと議論、そして新総裁の考えなどを私たちも見てその先の総選挙へとつなげていく必要があります。

以上、自民党総裁選についてお伝えしました。

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