「太平洋・島サミット」で記念写真におさまる岸田首相と参加国・地域の首脳ら(18日、東京都港区)

日本と太平洋の島しょ国・地域による「太平洋・島サミット」は18日、首脳宣言をまとめて閉幕した。海洋進出する中国を意識し、安全保障面の協力を重視した行動計画も打ち出した。日本は自衛隊艦船の寄港を増やし、警備艇の無償供与も検討する。気候変動を巡る技術支援にも力を注ぐ。

都内で開いたサミットには日本とオーストラリア、ニュージーランドのほか16の島しょ国・地域が参加した。8月までに大統領選があるキリバス、暴動が起きたフランス領ニューカレドニアを除く14カ国・地域は首脳級が来日した。

日本は1997年から太平洋の島しょ国・地域とサミットの枠組みを設けて信頼関係の構築につとめてきた。背景には歴史的なつながりがある。

サミット参加国のうちミクロネシア、マーシャル諸島、パラオの3カ国は戦前に日本が国際連盟の委任統治をした南洋諸島に含まれる。ソロモン諸島のガダルカナル島など第2次世界大戦で日米の激戦地になった場所もある。

岸田文雄首相は18日の記者発表で「同じ海を共有するパートナーであり様々な環境の変化に直面している」と述べた。「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に向けた協力、連携の重要性はますます高まっている」と強調した。

首脳宣言は「平和と安全保障」「気候変動と災害」「海洋と環境」などを重点分野と位置づけ、連携強化を掲げた。「世界のいかなる場所でも武力による威嚇など一方的な現状変更の試みに強く反対する」とも訴えた。

行動計画は海洋安保協力に関し、自衛隊の航空機や艦船の派遣を通じた共同訓練の強化をうたった。中国がソロモン諸島と安保協定を結び、南太平洋を軍事拠点化しようとする動きに対処する。

政府開発援助(ODA)とは別枠で安保上の支援を進める枠組みの「政府安全保障能力強化支援(OSA)」も活用する。警備艇の無償供与などを調整する。

日本はサミットを通じて地域の課題に寄り添った支援を前面に出した。巨額投資による債務のワナも指摘される中国との違いを演出した。

暴風雨被害や海面上昇など島しょ国の経済・社会への気候変動の影響が課題になっている。気候データを分析する人材の育成や深刻化するサイクロン被害に対応するための避難支援に取り組む。

海底ケーブルの維持・管理で連携し、デジタル通信の安全性を向上させる。パプアニューギニアなどへの漁業調査・監視船の供与、サモアには気象衛星「ひまわり」のデータ提供など具体的な案件を推進する。

太平洋の島しょ国・地域は米中対立の最前線ともいえる。中国の防衛ラインとされる小笠原諸島や米領グアムを結ぶ「第2列島線」、米ハワイを含む「第3列島線」が通り、日本と豪州やNZを結ぶ海上交通路(シーレーン)でもある。

中国の影響力が強まり、台湾と外交関係を断つ国が相次いでいる。現在国交を持つのはサミット参加国のうちパラオ、ツバル、マーシャル諸島の3カ国のみとなった。

太平洋の島しょ国・地域には東京電力福島第1原子力発電所からの処理水の海洋放出への懸念もある。科学的根拠に基づく安全性が確認された国際原子力機関(IAEA)の報告書をもとに対応を続けると確認した。

岸田首相と共同議長を務めたクック諸島のブラウン首相は記者発表で「日本が処理水について誠実な説明を続けると思っている。引き続き議論することを望む」と言明した。

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