新宿の高層ビル群。中央は東京都庁=東京都新宿区で2020年4月、本社ヘリから吉田航太撮影

 人口1400万人を抱える巨大都市・東京のかじ取りを決める「首都決戦」が幕を開けた。東京オリンピック・パラリンピックが終わり、コロナ禍前の日常を取り戻した今、東京が向き合うべき課題は何か。東京はどこに向かうべきなのか。各候補者が示す「針路」が問われる選挙戦になりそうだ。

 東京でにわかに先鋭化しているのは少子化問題だ。2023年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)が先日発表され、東京は1を割り込み、全国最低の0・99となった。「0・99ショック」という言葉が広がり、各候補者は少子化対策を基本政策の大きな柱に掲げている。

 高齢化対策も待ったなしだ。35年には都民の4人に1人が65歳以上の高齢者となる推計で、医療や高齢者施設の整備が求められる。また、首都直下地震や南海トラフ巨大地震への対応、老朽化するインフラの更新も急務となっている。

 その一方で、都知事には広い視野が求められる。その一例が「東京一極集中」だ。都の全体の予算規模はスウェーデンやオーストリアの国家予算に匹敵する約16兆円。名目都内総生産は約113兆円(21年度)で、全国の2割を占める。東京は全国から人やカネを吸い寄せて膨らみ続けている。

 この一極集中は、地方の“犠牲”の上に成り立っているとも言える。地方の街は人口流出が進み、少子化に拍車がかかり、活気が失われつつある。東京もバラ色ではない。人口集中は人口過密や住宅価格の高騰を招いている。一方で、東京が日本経済をけん引し競争力を高めている側面もある。東京には常に「光と影」がつきまとう。

 都知事選は人気投票になりがちだと言われるが、各候補者には東京が抱える課題だけではなく、首都のリーダーを目指す者として日本全体を見渡した活発な政策論争を期待したい。有権者にとっては東京の針路を見極める機会に、都外の非有権者にとっては東京のあり方から日本の針路を考える機会になることを願う。【都庁キャップ・山下俊輔】

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