自民党県連の井下泰伸幹事長(右)ら4会派と確認書に署名する山本一太知事(左)=県庁で2024年6月17日午前11時50分、田所柳子撮影

 群馬県議会は17日の本会議で、山本一太知事が提案した経済産業省出身の宇留賀敬一前副知事(43)の再任案を自民党などの賛成多数で可決した。知事と議会の3分の2を占める与党で最大会派の自民が対決した一連の騒動は一応の決着が付いたが、自民は処分者も出るなど、今後の結束には懸念材料が残った。【田所柳子】

 「今回の人事案に関し、議会に迷惑をかけたことは私の責任。全員協議会で約束した宇留賀氏の在任期間を1年とすることはいかなる理由があっても必ず守る」。山本氏は本会議で改めて低姿勢を示した。共産党2人を除く全員が賛成し、定例会は閉会した。

宇留賀敬一氏に副知事の辞令を交付する山本一太知事(右)=県庁で2024年6月17日午前11時20分、田所柳子撮影

 山本氏は閉会直後に宇留賀氏に辞令を交付。その後、議員が3人以上の交渉会派で賛成した自民、つる舞う、リベラル群馬、公明党の4会派の代表と面談し、宇留賀氏の任期を2025年6月17日までとし、後任をただちに探すことや県議会と意見交換できる体制の整備などの確認書に署名した。

 山本氏は各会派との連携を強化する考えも示し、「スピードと丁寧な説明のバランスをよく考えながら、これからの県政運営をしたい」と強調。宇留賀氏は「今回もらったいろんな指摘を今後の励みとし、県のために貢献する力に変えたい」と語った。

 ただ、当初は山本氏が再任案を提出する予定だった開会日の5月24日には自民内は慎重意見が大勢で、「否決する可能性があった」(自民党関係者)という。このため、山本氏は提出を先送りし、任期を1年に短縮する案を提示した。自民に賛成は増えたが、慎重論も根強く、14日には全県議が投票。17日朝に開票し、賛成多数だったとして賛成の党議拘束をかけた。同党が投票で賛否を決めるのは極めて異例。

 県連の井下泰伸幹事長は、投票をした理由を「我々が割れれば本末転倒。自民が大変な逆風にさらされる中で一丸となるべきだ」と説明した。ただ、投票直後に開票しなかったのは、知事側も含め党内が多数派工作で混乱するのを避けたとし、今回の騒動による知事との溝が解消されていない状況を示した。

 また、一連の騒動では自民県議が異例の重い処分を受けた。県連は当時議長だった安孫子哲県議が党の規律を乱したとして、1年の党員資格停止の処分を決めたが、安孫子氏は17日、「知事に議会への配慮を求めることは職責で、知事と県議団の連携を図るためにも必要な行為だ」と再審査を申し立てた。

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