熱中症のリスクが高い高齢者、とくに飲食物を飲み込む嚥下(えんげ)機能が低下した人の水分補給にどう対応すればよいのか。効果的とされているのが、とろみを付けたり、ゼリーにしたりして飲み込みやすくする方法だ。暑い夏を控え、三重県四日市市の嚥下サポート食品メーカー「ニュートリー」に注意点を聞いた。

 厚生労働省などによると、2022年度に熱中症で亡くなった人のうち65歳以上は86.3%を占める。政府の「高齢者のための熱中症対策」パンフレットによると、高齢者は体内の水分量が少なく水分が不足しがちなこと、加齢により暑さやのどの渇きに対する感覚が鈍くなること、暑さに対する体温の調節能力が低下することが原因という。

 さらに、加齢でのどの機能が衰え、水やお茶をうまく飲み込めなくなることがある。飲み物が気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」で苦しむことがあるため、水分摂取を避けがちになり、熱中症につながりやすいという。

 「嚥下機能は脳血管疾患のほか、加齢が原因で低下する。だれでも起こりえる障害です」とニュートリーPR部の藤本彩乃さんは指摘する。特に水やお茶のようなさらさらした液体は、飲みにくく誤嚥を起こしやすいという。

とろみ・ゼリー化材、医師らの指示のもと使用を

 藤本さんは「水分にとろみを付けたりゼリー状にしたりすると、飲み込みやすい状態になり、安心して水分補給ができる」と話す。とろみを付けると、のどをゆっくりと流れ、誤嚥を防ぐ効果がある。ゼリー状にまとまると気管に入りにくくなるという。

 管理栄養士でもある藤本さんは、医療機関などが選んだ専用の「とろみ材」「ゼリー化材」を、医師らの指示のもとに利用することを勧める。水やお茶だけでなく、炭酸飲料や乳飲料、オレンジジュースなどにも使えるとろみ材も開発されていて、好みの飲み物を選ぶことで、水分摂取のハードルが下がるという。持ち運びできる容器入りの水分補給ゼリーもある。

 食品を選ぶときは、消費者庁が認める特別用途食品「えん下困難者用食品」のマークが目印になる。藤本さんは「医療従事者の指導を受け、個人の嚥下機能にあった適切な使い方をすることが大切」と話している。(鈴木裕)

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